2013年漫画ランキング

【今年読んだ漫画ランキング】

ランキングの時間だよ〜

仕事で漫画を読む機会が多かったので、ここらで今年読んだ漫画ランキングを発表したいと思います。多分、今年は千冊以上読んだと思う。


「今年読んだ」という縛りだけで、完結・未完結は関係なくのランキング。ここに挙げた漫画以外にも、例えば『ワンパンマン』とか、『大使閣下の料理人』とか、『ジョジョリオン』とか、『きららの寿司』とか、『サムライダー』とか。いろいろと記憶に残る作品があった。たぶん、今思い出せないだけで、ベスト10級の作品はたくさんあったと思う。


特に、『ワンパンマン』は本当に面白かったものの、やっぱり、もう少し先まで読んで評価したいなぁと。『ジョジョリオン』も文化庁メディア芸術賞の大賞を受賞したけれど、同じ理由で選外にした。それに『ジョジョリオン』は、みんな大好きだから、別に挙げなくてもいいよね! あと、『暗殺教室』『進撃の巨人』は読んでいないので選外。


ちなみに、今年の僕の読書傾向は『料理マンガ偏重』といった感じだった。料理マンガは、世界情勢を料理で語る『大使閣下の料理人』、難しい上司を満足させるために頑張る『信長のシェフ』、「浦沢直樹vs漫画ゴラク」という異種格闘戦みたいな趣の『きららの寿司』など、バリエーションの豊富さを堪能できた。また、名作と呼ばれる作品を多く読むことで、評価されている漫画には、評価されるだけのパワーがあるということを再確認した。選り好みはいけないと反省する部分も。


ということで、10位から発表します!


10位:『ワカコ酒

ワカコ酒 1 (ゼノンコミックス)

ワカコ酒 1 (ゼノンコミックス)

OLが居酒屋で飲んで食べるというだけの、ページ数も少ない漫画。コミックゼノン連載の漫画では、一番面白いと思うのは、僕が酒飲みだからだと思う。この漫画を読んで、居酒屋でいろいろと注文するようになったし。読んでいて、「あ、こういうのいいよね」という共感を一番感じた作品だった。


9位:『ディエンビエンフー

ディエンビエンフー 1 (IKKI COMICS)

ディエンビエンフー 1 (IKKI COMICS)

西島大介という漫画家の絵は、あからさまにサブカル文脈で評価しやすいように感じられて嫌いだったのだけれど、その嗜好を木っ端みじんにしてくれた作品。読んで「お、面白いやんけー」と目から鱗が落ちるというのは得難い経験だし、それだけ漫画のパワーがあったということ。ベトナム戦争を舞台に、無力な報道カメラマンの少年が、殺人マシーンのベトナム人少女と、殺人マシーンのグリーンベレーの血みどろの戦いに巻き込まれる。可愛い絵柄と血と暴力の世界の共存は、ノラクロの昔から、漫画ならではの表現だと思う。


7位:『もやしもん

もやしもん(1) (イブニングKC)

もやしもん(1) (イブニングKC)

恥ずかしながら、今年はじめて読んだ漫画でどはまりした。ものすごく勉強になるし、大学生活のフリーダムさが心地良いし、とにかく読むのに時間がかかる。濃密な読書体験という感じが良かった。8巻の大学内で行われたオクトーバーフェスティバルのエピソードがとても面白かった。このエピソードはビールについての知識、国産地ビールについての状況も面白いし、実際の地ビールメーカー(大手も出てきた)も登場するという現実とリンクしたところも良い。


6位:『スーパーマン:レッド・サン』

スーパーマン:レッド・サン (ShoPro Books)

スーパーマン:レッド・サン (ShoPro Books)

クリプトン星からやってきたスーパーマンが、もし半日来るのが遅くてソ連に落下したら? という大胆なifで語られるのは、肉体的・精神的な超人であってもイデオロギーが間違っていると人間を幸福にはできない、という問題提起と、それでも人間が勝利するという人間賛歌だ。テロリストのバットマンや、最後までアメリカを背負ってスーパーマンと戦うレックス・ルーサーの生き様が熱い。「スターリン社会主義ワルシャワ条約」を守るために戦うスーパーマン、という笑えないジョークを一級のストーリーにしたところに、アメコミの豊かさを見た。


5位:『闇の国々

闇の国々 (ShoPro Books)

闇の国々 (ShoPro Books)

去年の文化庁メディア芸術賞のマンガ部門大賞受賞作品。架空の国々で起きる奇妙な出来事に翻弄される人々を描く。スクイテン&ペーターズの代表作で、バンドデシネの入門書としてもオススメ。とにかく、圧倒的なビジュアルイメージ、悪夢のように先の見えないストーリー、絵とストーリーが密接に結びつく面白さは、一冊に労力を詰め込むバンドデシネならではのものだと思う。値段が高すぎるのがネックだと思うけれども、海外マンガの認知度が高くなって、市場的に盛り上がれば、廉価版が出る余地はあるように思える。


4位:『白龍レジェンド』

白竜LEGEND 1 (ニチブンコミックス)

白竜LEGEND 1 (ニチブンコミックス)

ヤクザ漫画なので、好き嫌いが別れる絵柄なんだけれども、とにかく面白い。『原子力マフィア編』が復活して、タマフルでも取り上げられたこともあり、巷でも人気が高まっていると思う。白龍が仕切るシノギの金額が億単位なので、これを読んでいると『闇金ウシジマくん』とかが馬鹿らしくなってくる。ウシジマくんにはウシジマくんの切実さがあるんだけれどね。ヤクザの理屈や、日本の津々浦々でどういうシノギをしているのかなど、アンダーグラウンドを描いた漫画として筆頭に上がる作品だ。


3位:『空が灰色だから

空が灰色だから 1 (少年チャンピオン・コミックス)

空が灰色だから 1 (少年チャンピオン・コミックス)

10代の少女たちを中心に、トラウマ的なうまくいかないことを描いた作品。「日常系」なんだけれど毒気はかなり強い。読んでて吐くかと思ったのは、この作品が読み手の「うまくいかない」記憶を巧妙に抉ってくるからだと思う。ここに描かれるエピソードのような経験は、あまりないだろうけれど。この漫画はバッドエンドのエピソードばかり注目されるけれども、そうでないエピソードのクオリティも高い。心にある傷を抉って、そこにピッタリくっつくような、そういう漫画だと思う。


2位:『藤子・f・不二雄 異色短編』

藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編 (1)

藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編 (1)

藤子・f・不二雄さんを舐めてました! ごめんなさい! と土下座してしまうほど、読んでいてひっくり返ったSF短編集。巻頭の『ミノタウロスの皿』からして尋常ではない世界が描かれるのだけれど、子供向きと思われ作者自身も子供向きと考えていた作家性が、大人向きの短編となったときに露わとなる無邪気な絵柄と毒のある世界観の共存は、漫画の特色と言えるけれども、その究極形だと思う。藤子・f・不二雄の天才性が味わえる作品。


1位:『弱虫ペダル

自転車のロードレースを描いた漫画。自転車レースを描いた漫画にハズレはないと思っていたけれども、この漫画もやっぱり読むと感動してしまう。自転車競技って、豊富なテクニックや戦術と、自己の限界までペダルを漕ぎ続けることの二つが、とても奥深いスポーツだと思う。顔面崩壊するくらい頑張る競技って、他にはボート競技くらいだし、長距離で見せ場がたくさんあるということではマラソン以上。仲間思いの主人公が起こす奇跡がとにかく熱い。そして、勝者もいれば敗者もいるというスポーツの醍醐味を、ちゃんと描いているので、読んでて何度も目頭が熱くなった。今、アニメが放送されているのも、納得の傑作マンガだと思う。


ということで、ランキングの発表を終わります。


スポーツ漫画については、最近、『ジャイアントキリング』や『グラゼニ』のような戦術や業界を描いた、スポーツの奥深い部分を紹介するものが主流になってきているけれども、『弱虫ペダル』のようにオーソドックスなスポーツ漫画でも、まだ心を震わせることができる。それが、一番の評価ポイントだった。『弱虫ペダル』はかなりフィクション性の高いスポーツ漫画だけれど、人間ドラマと組み合わせる手法はいまだ威力があるなぁと。


個人的に『弱虫ペダル』が1位の理由は、純粋に感動したから。泣ける、熱い、というのは少年漫画の王道だよね。