『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』

スカパー!で鑑賞。



【ストーリー】
第二次世界大戦中、貧弱なロジャースはアメリカ軍に入隊するために、人体実験を受けてキャプテン・アメリカになる。当初は、軍のマスコットだったが、ナチスの秘密組織ヒドラとの戦いに巻き込まれてゆく……


【見所】
普通の戦争映画とスーパーヒーローもの、という水と油な組み合わせを、どう料理するか?
または、料理しきれないか。


【感想】
『アヴェンジャーズ』の伏線のためだけの映画、という世評は、その通りなんだけれど、面白いところも多々あった。


アヴェンジャーズの中でも、コンセプトも能力も一番地味なキャプテン・アメリカのビギンズを描くという映画。『アヴェンジャーズ』のためにキャラを揃える必要があったにせよ、このキャラクターの映画を作るのは難しかっただろうなぁと思う。なにしろ、名前からしキャプテン・アメリカだし、コスチュームは露骨に星条旗を元にしている。身体能力も大したことがない。


いくら舞台が第二次世界大戦だといっても、このキャラクターを動かすのは難しいだろうなぁと思ったが、そこは現代の目から見ても納得できる相対化や皮肉によって、ある程度納得できるものになっている。「ある程度」というのは、ものには限度があるわけで、ロジャースがキャプテン・アメリカのコスチュームと盾を持ったまま、捕虜を解放するためにヒドラの基地に乗り込む場面は、さすがに違和感ありまくりだった。でも、全体的に言えば、そこそこバランスがとれていたと思う。


監督はジョー・ジョンストンスターウォーズの特殊効果を担当したり、『ロケッティア』や『遠い空の向こうに』などの監督をしている。SF描写とレトロ描写の両方ともに信頼できる人、という印象。『遠い空の向こうに』は良い映画だった。キャプテン・アメリカをこのバジェットで撮影するのであれば、全盛期のスピルバーグの次に名前が挙がる人物かもしれない。


ストーリーは、『アヴェンジャーズ』への伏線という課題をクリアしていくことを優先しているのか、中盤以降はかなりダイジェストな感じになっている。ヨーロッパ戦線の中でキャプテン・アメリカの活躍を描くという目的も、あまり上手く機能していないという印象。キャプテン・アメリカの部隊の立ち位置、ヒドラの立ち位置、なにをしているのか、なんで戦っているのかが、観ていてかなり分かり難いのは、ジョー・ジョンストンの仕事にしては、あまりよろしくなかった。もう少し、物語を要領よく纏めることができたはず。脚本の問題かもしれない。


また、これは、心ならずも国債購入キャンペーンのマスコットにされたロジャースのシークエンスが面白すぎるからかも。『父親たちの星条旗』みたいな描写だなぁと思ったけれど、実際にああいう感じだったのかもしれない。戦時国債購入キャンペーンのマスコットとして舞台に立つキャプテン・アメリカに、ヒトラーが後ろから忍び寄る場面で、子供たちが「後ろ後ろ〜」と声を掛けるところとか。志村か! と思うと同時に、アメリカでも定番のネタなんだねーと。


また、戦争中であるにもかかわらず、博覧会を開くアメリカの超大国ぶりも新鮮だった。日本だと「悲惨な戦争、悲惨な銃後」という感じに描かれがちだけれど、アメリカは豊かな空気を保ったままのように見える。もちろん、言論統制を厳しく強いて、戦争の現実を知らせないようにしていたらしいし、「悲惨な銃後」の描写はベトナム戦争インパクトが強いから、「古き良き」を描きやすいのかも。


キャプテン・アメリカが盾を持ったキャラクターだということもあって、ことあるごとに盾的なものを構える描写が多い。また、誰かの盾になる、身を挺して庇うキャラクターだという設定はよく描けていた。スーパーヒーローは時代時代ごとの価値観に強く影響されるわけで、その中で「バットマンにおけるダークナイト」のように、新しいヒーロー像を提示することによって、キャラクターの刷新を図ることは多いと思うが、キャプテン・アメリカのように「古き良き」を体現するキャラにも一定の需要はあるのだろう。それを観客が飲み込める工夫も随所にあった。


一方、その対比となるべきレッドスカルが、あまり魅力的ではないことが映画の一番の難点だ。なんというか、ナチスなのに格好良くない。超兵器とか、世界征服とか、オカルトと科学の融合とか、魅力的になる要素はいくらでもあるのに。これはストーリーが中盤以降ダイジェスト化してしまった悪影響を、露骨に受けたからだろう。


というか、ナチスがレーザーを撃つのはいかがなものか、と思ってしまった。ナチスで許されるのはサイボーグまで。ちなみにレッドスカルが「砂漠で発掘……」と言っているのは、『レイダース』オマージュだよね。ナチスの科学者ドクター・ゾラが印象的だし、レッドスカル役のヒューゴ・ウィーヴィングも悪かなったのに。


あと、エンドロールの第二次世界大戦風ポスターのデザイン! あのトーンでキャプテン・アメリカを観たかったなぁ。