『焼きたて!! ジャぱん』

週刊少年サンデーに連載されていた料理漫画。パンに魅せられた少年が、世界一のパン職人になるために数々の試練を乗り越えていく……という話。これだけ読むと、普通の料理漫画のように思えるけれども、実際は料理漫画の「リアクション」という要素を究極まで突き詰めた漫画でもある。



料理漫画には、例えば「どういう料理に特化するか?(またはしないか?)」とか「料理をする側に主軸を置くか、食べる側に主軸を置くか」とか「主人公は天才か、そうでないか」などの組み合わせで無限のバリエーションができるという利点がある。また、漫画ならではのこととして、料理をするという地味な作業を、あたかも劇的なパフォーマンスとして描くことができるという利点もある。例えば、ミサイルが爆発する描写と同じくらいのインパクトで、美味しいパンを食べたときの絵を描くことができる。たかがパンのために、人も死ぬし、無人島に流されるし、陰謀は渦巻くし、王様も死ぬ。でも、それが成立するのも漫画のなせる技だと思う。


この漫画は、少年漫画雑誌に掲載されていたので、展開は真っ当なくらい真っ当にバトル系料理漫画になっている。主人公はパン作りの天才で、彼のパンを食べれば誰もが涙を流し、天国を垣間見て、死者とも合うことができるほどの腕の持ち主。料理漫画では、天才が主人公の漫画は多々あるけれども、今作の場合、それがちょっと度を超したくらいに凄い。世界大会に出ても、あたりまえのように勝利してしまうし。でも、最初の頃は、まだパン作りに未熟な部分があったり、パン屋の経営に四苦八苦するという描写があったのだけれど、世界大会に出たあたりでパン屋のことはどうでもよくなる。主眼は、天才主人公につりあう展開を用意することに移る。


でも、やっぱりモナコカップあたりで大団円を迎えるべきだったと思う。終盤は正直なところ、作者がやけっぱちになっていて惰性で続いているのがパッと観で分かるほど。しかも、ダルシムエンドだもんねぇ。その他にも気になって点として、この漫画、料理漫画であるにもかかわらず、かなり人が死ぬ。というか、パンの話なのに、悪人の悪人度合いが半端なかったりする。これも少年漫画らしい分かりやすさだと思うのだけれど、観ていてあまり気持ちの良いものではなかった。主人公サイドの話が明るいだけに、その落差に驚くんだよね。


面白いのは、リアクション芸の数々。「うまい!」という絵を出すだけだとそこで終わってしまうので、食べた瞬間にエピソードが色々とはじまるという手法は、賛否あるとは思うけれども新しい挑戦だったと思う。特に、銀河鉄道999のリアクションは爆笑してしまった。あと、やっぱり絵が上手いので、美味しいという表情に説得力がある。ただ、リアクション芸が突出してくると、パンの美味しさのロジックについてはどうでもよくなってくるのが残念なところ。色々と説明はしているものの、どうしても読み飛ばしてしまいがちになってしまうと思う。


個人的には、やっぱり序盤が一番面白かった。そして、序盤の展開を維持するのは、少年漫画にとってはこれ以上ないほど難しいことだと思い至った。