『TEKKEN -鉄拳-』

スカパーで鑑賞。


TEKKEN -鉄拳- [DVD]

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【ストーリー】
母親を殺された風間仁が、鉄拳トーナメントに参戦して、三島財閥に戦いを挑む。


【見所】
女の子はもれなくエロい。
でも、スラムの女の子(カーラ)とクリスティ・モンティロの両方とやっちゃう仁は爆発しろ。


【感想】
うーん、やっちまった感が凄い。


『鉄拳』はゲームはよくやっていたのだけれど、これを映画化するというのは正気の沙汰ではないような気がする。というのも、日本製の格闘ゲームと映画の食い合わせが悪いと思う。『ストリートファイター』にせよ『DOA』にせよ、世界的な巨大組織が殴り合いの喧嘩をしているというナンセンスさを、どう解決するのか……解決できないでしょ?! というわけで。しかも『鉄拳』は日本製の格闘ゲームの中では、かなり狂った世界観で展開されているし、よほど脚本が上手くないと物語が極端にチープになるのは明白だ。


良かった点は、セットが豪華なところ。wikiを観てみると予算が3000万ドルも掛かっている(成績は100万に満たない大爆死だったけれども)だけあって、世界観の作り込みはそこそこ頑張っていたと思う。テレビに大写しになっている三島平八のビジュアルが強烈すぎたり、オレンジ一個やコーヒーをすごい値段で取引するスラムの描写って変じゃない? って思うものの、ちゃんと物語を作ろうという意識が感じられた。監督はドワイト・H・リトルという人。これもwikiを観てみると、テレビドラマの監督を多く手掛けているらしい。


もう一つ良かった点を上げれば、やっぱり登場する女の子がみんな可愛いという点に尽きる。特に、クリスティ・モンティロを演じたケリー・オーバートンと、カーラを演じたミルセア・モンローは最高だった。半尻のズボンだったり、景気の良い脱ぎッぷりだったり、仁の都合のいいモテモテぶりだったり、女の子絡みのシーンはどれも満足度の高いものだと思う。ニーナとアンナの微妙に不細工で年増的なところとかも良かったし。逆に、男連中は、キャラの作り込みに失敗していた。


物語は、ゲームの『鉄拳』のメインストーリーである三島財閥の骨肉の争いに、母親を殺された風間仁の戦いが絡んでいく……というものになっている。で、三島平八を倒すためには鉄拳トーナメントで優勝しなければならないのだけれど、この鉄拳トーナメントがなんのためにやっているのか非常に分かりづらい。まあ、『鉄拳』の映画なんだから、『鉄拳トーナメント』をするのが当たり前なのは分かるのだけれど、そこになんで権力が絡むのか。冒頭の説明では、世界を支配する企業が、『鉄拳トーナメント』で代理戦争をしている……みたいに言われ、民衆のガス抜きのような描写もあるけれど。


これは、三島平八と一八がトーナメントに参加しないから起きた弊害だと思う。もしくは、三島財閥の後継者を決める大会、と最初から銘打たないから起きた分かりづらさではないだろうか。選手達が全員、世界企業からの何かしらの後援を受けているのに、三島財閥のクーデター騒ぎが起きてもなにも描写がないというのも変だった。この映画、もっとシンプルに、一八が前回優勝者としてトーナメントに最初から参戦していて、優勝者には三島平八との対戦権が与えられ、平八は最初から最後まで悪い人、という風にしたほうが腑に落ちたものになったと思う。


この映画の最大の問題点は、三島平八が良く分からないキャラになっている、ということに尽きる。

あのビジュアルを実写でやれば、間抜けなことになるよね。あれはないわ。で、そのビジュアルがなくても、映画の三島平八は『スターウォーズ』で言えばパルパティーンヨーダを合わせたような設定になっている。そこは平八を「力の信奉者」という面をクローズアップして、極悪人設定を貫かないと、前半のスラム描写とかがどうでもよくなってしまうし、実際、スラム描写(レジスタンスとか)がどうでもよくなっていた。筋骨隆々の老人、というのがキャスティング的に難しいのは確かだけれども、そこは『鉄拳』を映画化する上で、絶対に超えないといけないハードルだったと思う。


あと、『鉄拳』を遊びなれた人は、「え? この人がこの役?」と思うことが多いはず。特にスティーブ・フォックス! 感想を書くときにwikiを観ながら、「え〜! あのトレーナーがフォックスだったの?」と唖然としてしまった。もう一人はクリスティ・モンティロで、こちらはエディとの絡みもカポエイラもなにもない謎美少女になっていた。それ以外は、ある程度ゲームに忠実なんだけれども、吉光の義賊設定とかはないし、ソックリなレイブンの忍術設定も活かされないし、マーシャル・ローがブルース・リーっぽくないし、ミゲルが誰やねんって感じだし、色々と残念なところは挙げればきりがない。トーナメントなのにトーナメントになっていないところとか、もう少し考えればいいのにと残念だった。


個人的にはマードックとか、キングとか、ポールとかが出ないのは残念だった。マードックは実写でやれば「勝てるわけないやん」と思われてしまうという難しさがあるかもしれないけれど。総じて、安っぽい物語の中で展開される殴り合いは安っぽくなりがち、ということで事足りる映画だった。もっと大規模トーナメントにして、『ベスト・キッド』的な編集で効率的に描けばよかったのでは? ちゃんと人物を描こうとして、失敗して、やっちまったという三段オチ。ラストは仁がスラム街に帰っていくところで終わるのだけれど、これってなにも解決していないよね?? カーラが「クリスティって娘とやったんでしょ!」と問い詰めるシーンが入ってたら、僕の評価も上がったかも。そういうところも含めて、鉄拳ぽい映画だなぁと思わないでもない。