『アサギロ』

日経ビジネスアソシエで紹介されていたので、興味を持って読んでみた。8巻まで刊行中で、7巻まで読了。


アサギロ 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

アサギロ 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)


沖田総司を主人公にした新撰組マンガ。美形の天才剣士(労咳持ち)という属性持ちの沖田総司は、その反面、土方歳三近藤勇と比べて、あんまりエピソードというエピソードがないんだよねぇ。なので、脇役としては見栄えがいいけれども、主役としてはちょっと荷が重いような気がする……と思っていたのだけれど、ちゃんと物語が成り立っているところは、作者の力量によるところか。


新撰組マンガと言えば、最近読んだマンガで言えば『ちるらん』というのがあって、これは新撰組の体裁を借りたヤンキーマンガだった。どっかの不逞浪人が「お前どこ中じゃ〜!」と言うと、主人公の土方歳三が「試衛館中じゃ文句あるかボケ〜!」と言い返すような世界観。もしくは、『壬生義士伝』のような新撰組秘史のような話もある。意外に、正面から新撰組を題材にしたものって少ないな〜と思っていたら、ここで真打ち登場! と言いたくなるようなマンガが出てきた。まあ、名脇役としての登場回数は突出しているんだけれどね。


というよりも、マンガで新撰組が出続けた結果、ある程度の要点の押さえどころが作り手にも周知されつつある……ということかもしれない。「有名藩士や志士がどんなキャラで出てくるのか〜」という見所もある。新撰組は本当にキャラの立った人間が多い! というか、幕末自体が濃い人間ばかりで、後世の色んな人が色んな後付設定をかました時代なんだけれど。で、このマンガの場合は史実にも沿っているし、これまでの作品から継承しているフィクションとしての新撰組にも目配せしてる。このバランス感覚は特筆されるものがある。


絵や雰囲気は、井上雄彦岩明均の良いところを合わせた感じ。主人公の沖田総司はまんま岩明キャラだよねぇ。で、その他が井上キャラっぽい。あと、『バガボンド』や『ヒストリエ』でも観られる、「刃物が当たると死ぬ(切断される)」という描写も受け継いでいると思う。反面、人物の書き分けができていないような気がする。特に、山南とか永倉とか。一枚絵で描くと違うんだけれど、ちょっとしたコマ(面を被っているところとか)では、誰が誰だか分からん場合が多い。


ちょっと面白いと思うのは、新撰組の中核を成す近藤勇土方歳三が、試衛館時代を描いている序盤でも、あまり表に出てこないというところ。近藤勇がそうなのは他の作品でもままあるのだけれども、土方が石田散薬を売り歩いている薬屋から脱皮していないのは珍しい。でも、我流剣法で飛び抜けて強いわけでもないし、近藤勇との縁も沖田総司ほどに深くない(というよりも薄い)土方歳三が、どうやって新撰組の中核にのしあがっていくのか、そこが楽しみだったりする。


久々に続きが気になる漫画だった。