『パシフィック・リム』

映画館で鑑賞。


【ストーリー】
太平洋の底から現れる「怪獣」と、巨大ロボット「イェーガー」のデスマッチを描く。


【見所】
全部!
やられた!! これは凄い。というか、絶対に映画館で観るべき映画。


【感想】
「怪獣と巨大ロボットが殴り合う」とかエヴァみたい」とかいう前情報を聞いていたけれども、これほど前情報通りで、僕達が観たいスーパーロボット系のハリウッド映画を観たのははじめてかもしれない。とにかく巨大! とにかく殴り合い! とにかくオタク的! とハリウッドが2億ドルを投じて日本のロボットアニメを実写化したら、こんなに凄いものができるんだぞ! というパフォーマンスとしても最高だった。


監督は、おそらくハリウッドでは最もアニメ・漫画に精通しているであろうギレルモ・デル・トロ。アメコミ原作の映画を撮れば『ヘルボーイ・ゴールデンアーミー』のような傑作が出てくるし、ファンタジー映画を作れば『パンズ・ラビリンス』のような傑作が出てくるという、奇跡のような人。で、今回は、デル・トロの本命中の本命である日本の怪獣、ロボットアニメをベースにした映画がじゃじゃーんと出してきた。インタビューではロボットアニメの影響にパトレイバーの名前を出していたけれども、それって「俺は詳しいんだぜ」アピールと気の利いたリップサービスだと思う。だって、ぜんぜんその要素はないから。


とにかく、冒頭から小難しいことはとりあえず置いといて、怪獣とのど迫力バトルを描こうという姿勢は本当にえらい! と思った。ハリウッドならではの資金力があってこその内容だとは思うけれども、日本のロボットアニメにありがちな「乗る乗らないで迷う」みたいな話が一切ないのは潔い。おそらくは、脚本の段階でそういう湿っぽいのはアメリカの観客にはウケないと判断したからだと思うけれど。その代わり、各国のロボットが集うところや、主役パイロットが女性なところや、必殺技で怪獣をぶっ飛ばすところ、怪獣対策で巨大な壁を作るところなど、ウケると判断した要素は容赦なくぶちこんでいる。そして、安心と信頼の核兵器オチも踏襲。


俳優はみんな良かった。菊地凛子って微妙かな〜と思ったのだけれど、ハリウッドって最初はちょっと不細工かな〜という女性を、話の流れで可愛く見せる演出が超上手い。プラグスーツみたいな服装や、初登場時は怒っているのかな〜というような表情、そしてドア越しに覗き観るところなど「わかっとるの〜」とデル・トロの肩を叩きたい。マコの幼少時を演じていた芦田愛菜は、泣き叫ぶ、怖がる、救われるの演技しかなかったけれども、これも凄く良かった。とくに、ロボットから出てきたペントコストを見詰める戸田愛菜の顔は、こういう表情ができる子役ってどれくらいいるのだろうと思うくらいの良さがある。


厳格な司令官であるペントコストも良かったし、闇商人のハンニバル・チャウ、博士2人など、記憶に残るキャラも多い。ハンニバル・チャウはラストに○○から○○きたけれども、○○の体液って酸性って設定がなかったっけ?? 舞台である香港の、『ブレードランナー』っぽさも雰囲気が出ていたと思う。博士については生物(怪獣専門)・数学(確率)がいるのに、一番重要な工学系がいないのが気になった。パンフレットを見ると、ロボットにはそれぞれ必殺技があるのだから、それを嬉しそうに解説する役の人がいても……と思ったのだけれど、司令官と被るから出さなかったのかなぁと。そして博士と言えば、『バトルシップ』でもやってた「異星人の記憶を読み取る」みたいなのを、ちゃんと設定に絡めているのはさすがだと思った。


物語そのものはとにかく「これが巨大ロボットです!」という内容で、今更新鮮味はない。でも、映画館の大画面で、巨大ロボットがタンカーで怪獣を棍棒のように殴るのを観ると、男の子だったら誰だって興奮する。ただ、惜しむらくは音楽がもうちょっとノれるものだったら良かったのに。映像の凄さに比べると、ちょっと音楽が弱いんだよねぇ。それこそ、エヴァンゲリオンの「ダーンダンダン」みたいな音楽が流れれば、たぶん殴り合いのシーンではもれなく絶叫&失禁していた。それと、中国とロシアのロボットがあまり活躍しなかったのは残念だった。それぞれがそれぞれの持ち味で、怪獣と相打ちになるくらいの戦いをしてほしかったが。さらに言えば、日本のロボットが……


怪獣については、もう少し外見的な特徴があっても良かったかな? いろいろ種類は出てくるんだけれども、明確な違いがあまりない。最後の大ボスの大きさが良く分からないのも気になった。でも、とりあえず観て思ったのは、「これで『エヴァ』の実写化の目処は立ったな!」ということと「『ワンダと巨像』の実写化の目処は立ったな!」の二つだったりする。特に、『ワンダと巨像』はこれで作りやすくなったのでは?


映画館で観るのに、これほど適した映画はないと思う。必見! そう自信を持って言うことができる。