『批評理論入門』
ようやく読了。
批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)
- 作者: 廣野由美子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2005/03/01
- メディア: 新書
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古典SF『フランケンシュタイン』を題材に、前半は小説の技法についての解説を、後半は批評理論について概説している。まず、題材が『フランケンシュタイン』というのが良かった。誰もが知っているけれども、実際の所、読んだ人なんて日本ではあんまりいないのではないか……(ボリフ・カーロフのビジュアルや、『怪物くん』のイメージは有名だけれど)と思う小説だし、名作として批評も研究もされた小説ということで「あ〜あれでしょ? フランケンシュタインって人造人間が出るやつ?」程度の理解しかなくても、興味を持続して読むことができると思う。
小説の技法については、個人的にはデビッド・ロッジが書いたその名もズバリな『小説の技法』の価値を再確認するようなものだった。文学者的にあの本はどうなんだろうな〜と思っていたけれども、たびたび言及されているのを読んで、やはり資料としても優れた内容だったんだねと思った。実際の所、前半部分を勉強したいのなら、デビッド・ロッジの『小説の技法』を読んだほうがいいと思う。それぞれの技法にマッチしたテキストを紹介しているし。
- 作者: デイヴィッドロッジ,DaVid Lodge,柴田元幸,斎藤兆史
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1997/06/01
- メディア: 単行本
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実際、この本は後半が重要だと思う。『フランケンシュタイン』という小説が時代時代によってどう批評されてきたか、というのがこの本の主眼になっていて、道徳的批評や伝記的批評、ジャンル批評から、フェミニズムやジェンダー、マルクス主義といった新しい切り口で批評されたことが概説される。現在の文体論的批評や透明な批評までいくと、難しかったりエッセイじゃないの? といろいろ考える部分もあるが、こういう風に時代時代によって新しい解釈が生まれる作品こそがマスターピースと呼ばれるのかなと思った。
基本的に入門書ではあるが、大学の講義を元にしているようなので、概説としては内容の濃いものになっていると思う。新書でこのレベルが読めれば嬉しいよね。また、この本から離れて、自分が好きな小説の解釈をいろいろ考えてみるのもいいかもしれない。