『悲しき獣』
TSUTAYAでレンタルして鑑賞。
- 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
- 発売日: 2012/06/02
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【ストーリー】
中国の朝鮮人自治区に住む朝鮮族の男が、韓国での殺人を請け負う。
【見所】
ミョン社長!
なんという蛮族ぶり。
【感想】
ライムスター宇多丸師匠のオススメ映画だったし、あの『チェイサー』のナ・ホンジン監督の作品だし、そりゃ面白いだろ!と思っていたら、本当に面白かった。
監督のナ・ホンジンという人は、追ったり追われたりという描写や、静かなオープニングから怒涛の展開への切り替えが非常に上手い。これが長編映画二本目、というのが驚くほど。この監督の特徴としては、「人が非常にしぶとい(死なない)」というのもあると思う。あと、前作の『チェイサー』を思い出させるような建物があったりして、世界の繋がっている感じも良かった。韓国のソウルが舞台だから当たり前だろうけれど。
この映画って、警察以外は拳銃を使わないんだよね。ミョン社長もキム社長も、ヤクザ者なのにナイフや斧を振り回すけれども、飛び道具は使わない。主人公のグナムにしても包丁を主要ウェポンにしている。これは主要登場人物(勢力)が犬をイメージしているからだと感じられた。キム社長たち韓国のヤクザがドーベルマンやシェパード、ミョン社長たち朝鮮族ヤクザが群狼、そして主人公のグナムは一匹狼。
『チェイサー』では血も凍るような殺人鬼役だったハ・ジョンウが、今回の『悲しき獣』では朝鮮族のタクシー運転手役として地獄巡りをする。乱暴でぶっきらぼうで、どこか憎めないキャラをきっちりと演じている。そして、『チェイサー』では元刑事の主人公だったキム・ヨンソクが、現代に生きる蛮族にして、群狼のボス狼であるミョン社長を演じている。
このミョン社長が超強烈。ターミネーターと戦っても勝つんじゃないかというくらい強い!というか、刺されたり殴られたりしてもなんでもないタフさと、仲間と一緒に肉を食べるシーンが、野獣の臭いをプンプンさせていて、同じ男として「あー勝てん」と思ってしまう説得力があった。骨を持って暴れるって、話は聞いていたけれど、やっぱり観たら強烈。仲間の朝鮮族ヤクザの蛮族っぽさも良かった。
アクション映画では、たまに「コントロールできない奴(敵役)が出てきて大暴れする」というキャラが出てくるけれども、それの最新版だと思う。そして、そのミョン社長たち群狼に追われながらも逃げ通すグナムも狼だったからこそ、映画の最後まで生き残ったのだと思う。ラストはああだけれど。
物語としては、ストーリーが途中からわけわからなくなる。映画を見終わったあとにオマケの人物相関図を見て、ようやく「あーそうなのね」と。でも、なしくずし的に怒涛の展開になるので、それが致命的な欠点にはならない。でも、もっと物語を整理したほうが、追う追われるがダイレクトに興奮できると思う。
終わり方がスマートなのも、鑑賞後の余韻が良い原因だった。