『学校怪談』

学校怪談 (1) (秋田文庫 (55-1))

学校怪談 (1) (秋田文庫 (55-1))


高橋葉介の代表作。内容は学園を舞台にした短編ホラー漫画で、血生臭い話もあれば、不気味な余韻を残す話もあり、ショートショートとして読んでも物語がかなりしっかりしている。同じ漫画家の荒木飛呂彦は『死刑執行中脱獄進行中』のあとがきのなかで、短編を大きく、


A.登場人物の行動や思いをひたすら追いまとめた作品
B.ほんの短い時間の出来事を切り取って、そこに人生やテーマを
  閃光のように象徴させる作品
C.ナンセンスやサスペンス、ムード、デザイン、エロ、グロ。
  それそのものを描くのを目的とした作品
D.日記やエッセイ、手紙


の4つに分類している。


その分類法で言えば、高橋葉介という人はCの名手だと思う。純粋なショートショートの追求者という印象を持った。この短編集は、題名が先にあって、その題名を膨らませるかたちでストーリーが作られている。日常のふとした違和感や出来事から、血みどろの惨劇に繋がったり、異世界の扉が開くというのは、星新一の小説をホラー漫画にしたような趣がある。それも一編一編のレベルが高いところに高橋葉介の才能があるのだろう。


似たような作風でいえば諸星大二郎が挙げられるが、諸星大二郎のような叙情性や突破力はないものの、カッチリとしたストーリーを作り上げて読者を楽しませるという面においては、高橋葉介ショートショートで5年も連載を続けられたことからも力量が伺い知れる。同じ作者の『我楽多街奇譚』のあとがきを読むと、ト書きの原作脚本を書いてから、ネームに取りかかるという製作方法をしているらしく、だから物語が一定して切れ味鋭いのかと納得した。


また、意味性を物語に持たせていないのは、登場人物の名前が統一されていて、前の話で首チョンパされていても、別の話では別の役割が与えられているところなどに象徴されていると思う。そのことによって、超現実的な悪夢感が、単行本で通して読むと発生するのが面白い。


でも、正直言って、最後の読み切りだけは諸星大二郎リスペクトがヒドい! そこだけが残念だった。