『GANTZなSF映画論』


GANTZなSF映画論 (集英社新書)

GANTZなSF映画論 (集英社新書)


題名を見て、「え?奥浩哉さんが映画『GANTZ』のことを語るのか?!」と思ったら、SF映画全般の映画駄話が内容でした。ホラー映画は荒木飛呂彦さん『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』で書いているので、二匹目のドジョウを狙った的な企画なのかなと。


そういうわけで、この新書を読んでみると、荒木飛呂彦さんのホラー論と比べて、漫画家ならではな部分があまり見られないな〜という印象でした。有名どころのSF小説はほぼ取り上げられているのですが、やはり駄話以上のものはなかったなと。映画駄話でも面白いものは本当に面白い。その水準には達していないと思います。


漫画家独自の視点でいえば、荒木飛呂彦さんのように「分類」も「『プレシャス』はホラー」という興味を引くような面白みも少なかった。自分が書いている漫画『GANTZ』との関係をちょっと絡ませているけれども、目次で書かれている以上の情報量はなかったなぁと。あと、やはり映画『GANTZ』をどう思っているのかについて、ちょっとは言及したほうが良かったのでは?


最大の問題点は、忙しい週刊連載の漫画家に負担を掛けるのはどうなんだろう、というところかな。



映画本としては、かなり異質で面白い本。これくらいのレベルが求められるよね。


宇多丸さんのラジオ番組タマフルで「フード理論」を提唱した福田利香さんの、フード理論を一冊にまとめた本。映画あるある本としても、一風変わった(それでありながら腑に落ちる)映画論としても読める。


映画の食事シーン(だけではないけれど)の良くある描写を語って、そこに潜む演出上の意味を解説するという内容。オノ・ナツメさんの絵も趣があって面白い。ヒールは食べ物を粗末に扱い、ベビーフェイスは食べ物を美味しそうに食べる、という「フード理論」はけっこうエポックな映画の見方で、この一冊を踏まえて映画を観ると、また面白い発見があるかもしれない。