『中国化する日本』

那覇潤さんの歴史エッセイ。


中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史

中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史


歴史本とするには、この本は専門家の批判に耐えられないし、そもそもが日本史の新たな視点を門外漢に提示するためのものなので、ジャンル的な位置付けが迷う本だと思う。僕が一読した感じでは、もう少し洗練されていれば日本のマット・リドレーかジャレド・ダイアモンドになれるのでは……というものだった。


題名が悪いし、よく読まないと真意が図りかねるところがあるけれども、簡単に言うと「日本の近現代のロールモデルに『西洋化』はなく、『中国化』と『江戸時代化』を軸にしてきた」というもの。ポイントは、「日本の」というところにあると思う。これを読み間違えると、違和感が相当募るものになる。宋代に完成した中国の近代システムと、江戸時代に完成した封建システムの二つに揺れ動く日本の姿を平清盛の時代から現代まで語る。


引用文献はポイントを押さえていて、著者が日本の近現代史の専門家だけあって、首肯するにも反駁するにも一筋縄ではいかないものになっている。さすがに中世あたりの歴史像や、そもそも著者の中国の描き方については「そうか〜?」と思うところもあるけれど、そこは現在の歴史学の潮流を踏まえているので、そこが飲み込めれば面白い。あと、著者は「中国化」をそんなに良いこととも捉えていない(けれども歴史的には不可避)ことにも注意が必要。


ちなみに僕はここに書かれていることについては根本的に否定的。まだまだ首肯するには、論の組み立てが上手くないように思う。