『山賊ダイアリー』

山賊ダイアリー(1) (イブニングKC)

山賊ダイアリー(1) (イブニングKC)

「狩人」という人類が誕生してからある職業を、岡山で行っている著者が描いている漫画。狩猟というと、鉄砲を持って猪や野鳥を狩るというイメージだけれど、日本では当然のことながら銃刀法という厳しい法律があって、狩猟にも厳格なルールが存在する。そういう知られざる世界を覗き込める楽しさが、この漫画の魅力だと思う。


狩猟の免許には、ライフルやショットガンを使うものと、罠を使うものの二種類の免許があるということや、狩猟用の銃は空気銃を使う(しかも、空気銃でも結構な威力)だということなど、はじめて知るようなことが山ほど出てくる。狩猟できる動物も制限があることや、農家の人の依頼でカラスを駆逐する仕事が多かったり、猪が一頭100万円もすることなど面白い話が続く。でも、こういう「面白い」と感じる部分は、裏返せば、僕たちがいかに都会で生活していて、自然と隔絶しているかの裏返しだと思う。


1巻の冒頭に、岡山でハンターをしたいということを著者が恋人の女性に話すと、まったく理解してもらえなかったというエピソードが出てくる。「ほとんどの女性は狩りを理解してくれない」と著者は語っているけれども、それは「狩猟」そのものに対する理解というよりも、現代の日本で「狩猟」という「暴力」を行う男に対する忌避感じゃないかと思う。


漫画を読めば、農村部でハンターが担う役割というのは、決して軽いものではないということが分かるが、そういう必要性は都会では見えづらいし、そうなると「なぜわざわざそんなことを?」という気持ちに繋がるのも理解できるというものだ。それに、ハンターの仕事がニュースで好意的に報じられることは猪や熊の駆除以外にあまりないし、それも都会では実感しにくいし、誤って山菜採りのおばあちゃんを撃ったとか、銃で殺人を犯したとかいう犯罪報道ばかりだと、怖がられるのも仕方ない。


最近のニュースでも、猟友会に入ろうという若者が少なくなっているというものがあって、理解不足は女性でも男性でも同じだと思う。でも、こういう漫画が評判になることで、社会を構成する仕事としてのハンターが周知されれば、状況は変わるのかもしれない。なにより、狩猟は太古からある職業で、これからも人間が地球にいるかぎりは必要でありつづける職業なのだから。