『47RONIN』

映画館で鑑賞。パンフレットも購入。


【ストーリー】
忠臣蔵


【見所】
とんでも日本描写。
でも、それも中途半端な感じ。


【感想】
60点!
本当は47点でもいいくらい。


忠臣蔵をハリウッドで映画化! しかもキアヌ・リーブス主演で! というニュースを聞いたときは「マジで?!」と耳を疑い、予告トレーラーのトンデモ日本ビジュアルに目を疑った。それと同時に、これってどうなんだという不安と、もしかしたら面白いかも! という期待もあって鑑賞したのだけれど……


観る前は、かなりハードルを低くしていたので、オープニングのケダモノ狩りも、
お、モンハンっぽい!
と思ったけれども、正直、低いハードルだって躓くわい! と言いたくなる。



そもそも映画の題材として忠臣蔵を選ぶというのは、かなり難易度の高いチャレンジだと思う。忠臣蔵は日本人の人口に膾炙された物語だけれど、一般的な「仇討ち」とはかなり性格の異なる話しだし、江戸時代の日本文化を一から説明するのは、かなり難しいと思うわけで。ハリウッド版の忠臣蔵を作ろうとしたときに、この二つを二時間の映画にするハードルの高さに頭を抱えたはずで、トンデモな日本ビジュアルは苦肉の策だっただろうなぁと想像する。


監督は今回が長編映画デビューになるカール・リンシュ。でも、脚本はかなりのビッグネームである、クリス・モーガン(『ワイルド・スピード』シリーズの脚本家)と、ホセイン・アミニ(『ドライヴ』の脚本家)が担当している。でも、僕はこの映画の脚本には感心できる部分がなかった。B級アクション映画のダメなフォーマットをそのまま運用しているという趣向で、見ていて色々と首を捻ってしまった。


良かった点は、トンデモ日本ビジュアル。これは、もうこういうものと割り切るしかないけれども、僕は結構楽しむことができた。江戸時代の日本文化を一から説明するわけにもいかないから、誇張された異文化としての日本を作ったというのは、ハリウッド的には当然のことだと思う。徳川綱吉を向かいいれる赤穂のビジュアルは幻想的だった。まぁ、日本描写については、これはどうかと思う部分も多々あったけれども。特に、ラスト辺りの、下馬した徳川綱吉と目線が一緒な赤穂浪士の人々とか。吉良が長門の国を治めていて、長門が赤穂の北にあるところとかも、ちょっとは考えてほしかった。


ストーリーははっきり言ってダメすぎた。この物語は、浅野忠信が吉良で、田中泯が浅野を演じているのだけれど、この配役は逆じゃね? と思った。浅野忠信は悪い役者じゃないのだけれど、邪悪な人間というイメージがあまりないんだよね。悪い妖術使いに誑かされた、アホな殿様という感じで、あまり悪そうにも憎らしくも見えないのは問題だと思う。浅野内匠頭切腹したあと、赤穂を併合した吉良が悪政を敷くような描写がなく、ただ「仇討ち」の理由を武士道に求める内容は、非常に飲み込みづらい。


というか、すべてが吉良の陰謀だったと、どういう理屈で大石内蔵助が気付いたのかの理由もよく分からなかった。「怪しい妖術使いがいる」というカイの言葉だけだもんね。乱心して浅野内匠頭が吉良に切りかかったという「事実」に対して、真相を知るようなシークエンスがないと、仇討ちとも言えないと思う。カール・リンシュ監督はジブリアニメとかのオマージュをするのなら、『ゲド戦記』じゃなくて、ちゃんと『ルパン三世カリオストロの城』を研究してほしかった。


キャラクターについては、悪役が魅力的でないということが一番の欠点になっている。吉良は田中泯が演じていれば、底の知れない邪悪な人物になったと思うけれども、アメリカで認知されていないから(資金集め的に)ダメだったのだろうなぁ。それは別として、吉良の巨人侍とか、長崎の全身入れ墨男とかの使い捨てっぷりがヒドい。四十七士全員を目立たせるわけにもいかないだろうけれど、主要な何人かは見せ場を作ってほしかった。そのための悪役配置に失敗していると思う。


なによりも、菊地凛子演じる妖術使いが、なんのために吉良に仕えているのか解らなかった。吉良を操っているようでもなく、邪悪な目的があるわけでもない。浅野を乱心させることができるのなら、徳川綱吉を殺したほうが手っ取り早いのでは? 婚礼の儀式の前に、変な占いをして調子の良いことを言ってたけれども、ああいうのを伏線にしない映画って本当にダメだと思った。菊地凛子もそんなに大した女優でもないし。


キアヌ・リーブス真田広之は及第点だった。これも、悪役がダメだったので、実力を出し切れず、という感じで終わったけれども。最後に、ラストの四十七士全員が切腹をするのだけれど、そのシーンに介錯役が一人もいなかったのは、見ていて本当に可笑しかった。綱吉さん、あんたどサドやで、と。


【パンフレット】
今回はパンフレットを購入したけれども、あまり質は高くなかった。表紙の加工はカッコいいんだけれどね。冲方丁がレビューを書いていて、多分、書くことに苦労しただろうなぁという文章だった。