『ダーティ・ハリー2』

スカパーで鑑賞。


【ストーリー】
ハリー・キャラハンが、警察内の私刑集団と戦う。


【見所】
若々しいイーストウッド
白バイ軍団がカッコいい。


【感想】
裁判で無罪になった悪党を、謎の白バイ軍団が撃ち殺しまくる……という『ワイルド7』を彷彿とさせるストーリー。でも、時系列を追ってみると、『ダーティー・ハリー2』よりも『ワイルド7』のほうが先に作られている。『ダーティー・ハリー2』が『ワイルド7』を参考にしているかについては偶然の一致だとは思うものの、私刑を行う白バイ軍団というモチーフはインパクトがある。


『ダーティー・ハリー』シリーズの2作目。1作目では規則を無視したり、射殺を優先する警官だったハリーが、この作品ではかなりヒーロー寄りの人物像になっている。敵の白バイ軍団が、法で裁けない悪党をぶっ殺すという集団なので、その対比になっている。よく言われるのは、1のアンチテーゼなんだけれど、僕はそういう風には鑑賞できなかった。


この物語は「ギリギリのところで法は守る」ハリー・キャラハンの戦いを描くのではなくて、「法を無視して正義を貫く」ハリーと白バイ軍団の縄張り争いを描いている。犯行を重ねる白バイ軍団と、ハリーの犯罪者との戦いが交互に描かれるけれども、実際のところ、この両者の行為にほとんど違いはない。ハイジャックでも、スーパーマーケットの強盗も、悪党を裁判なしで撃ち殺しているのはハリーも同じだ。違いは、未熟な白バイ軍団と、熟練したハリーの力量差しかない。


キーワードとして使われる「身の程を知れ」という言葉は、一般的には警察の職務から逸脱するな、という意味に思える。が、ハリーが言うことによって、警官として「法を無視して正義を貫く」彼の、「俺以外にこの仕事を任せられるか」という意識の表れになっている。1作目では法の網から逃れたサソリを殺したハリーは、警察官のバッチを捨ててしまうが、2作目で何事もなく戻ってきた彼は、警察公認の(節度を守った)殺し屋になっている。この映画の結末が、「法で裁く」と宣言した黒幕を爆殺するのは、つまり1のアンチテーゼでもなんでもないということを意味する。


映画としては抜群に面白い。白バイ軍団の威圧的な描写は、警察の権威がなくなった今でもグッとくるものがあるし、彼らが悪党を撃ち殺しまくるのには胸がすく。あの白バイがバックミラー越しに追跡してくる描写が、この映画の魅力のほとんどだと思う。ちょっとした行き違いが、ハリーと白バイ軍団の対立に発展してしまうというのもいいし、ギャングと共闘するところや、射撃大会でハリーが警官のハリボテを撃つところも良かった。


逆に、最後の戦いがちょっと盛り上がりに欠けるかなぁと思った。特に、白バイ軍団最強のデイビスが、海に落ちて終わりというのは、ちょっと拍子抜けというかなんというか。あそこは、その前にもう一人の追跡者からハリーは拳銃を奪っているわけだから、決闘する展開にしてほしかった。考えてみると、ハリーは白バイ軍団相手に拳銃を使っていないのよね。『マグナム・フォース』という原題なのに。拳銃を使わないのは、多分、作り手に明確な意図があってのことだと思うが。