『もやしもん』


もやしもん(1) (イブニングKC)

もやしもん(1) (イブニングKC)


11巻まで読了。


デフォルメした菌類を見ることができる主人公が、農業大学の面々と楽しい学園ライフを送る、という話。アニメ化もされているし、テレビドラマにもなったので、名前は有名。でも、今回読んでみてこういう話だったのか〜と驚いた。内容は、かなり学術的な話になっていて、菌類の話から発酵、酒造、農業の話まで多岐に渡って含蓄に富む。


ものすごく内容が深いのに特に原作者がいないのは、その分、編集者がサポートしているからだろうと思った。単行本で雑誌と帯にコメントなどが書かれている漫画は、編集者がかなり内容に関わっていると『マンガ夜話』で言われていたのを思い出す。でもストーリーの作り方や、解説が分かりやすいのは作者の力量があるからだなぁと。


そのためか、11巻読むまで普通の漫画の二倍から三倍くらいの時間が掛かった。私は料理マンガとかの説明シーンになると読み飛ばしがちなのだけれど、この漫画は、知識欲を程よく刺激してくれるのでついつい読んでしまう。菌類のデフォルメしたキャラが説明するという可愛さもあるし、樹教授の小さな文字も読むのにあまり苦にならなかった。女性のキャラクターが全員気持ちのいい性格をしているのも良いところ。


物語的には大学生活を描くことに主軸が置かれていて、個性的な登場人物が大暴れするという学園モノのフォーマットに忠実に作られている。そして、農業大学という専門性の高いところが舞台になっているので、高校が舞台の漫画よりもスケール感が大きいという魅力があると思う。イベントごとの大騒ぎぶりが尋常ではなく、私がいた大学はこんなんじゃなかったけれどな〜と思うものの、専門的な大学だったらこういう世界もアリなのかな〜と許容できる部分があった。『ああ、女神様』と学園の描き方は似ている。


11巻でようやく1年間が経過したという感じで、読むのに時間が掛かるのとあいまってボリューム感がとても大きい。このボリューム感が「充実した学園生活」の羨ましい感じを演出している。物語は酒造がメインになっていて、その他にもチーズや味噌といった発酵食品などが取り上げられている。大学で日本酒を醸造しようという縦線に、いろんなキャラクターの人間関係の横線が作られていくのも楽しかった。


個人的に好きなエピソードは8巻のビールとオクトーバーフェスタの回。ああいうビール祭りには私も参加してみたい! と思った。