『ブラザーズ・グリム』

スカパーで鑑賞。


ブラザーズ・グリム [DVD]

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【ストーリー】
グリム兄弟が呪われた女王と戦う。


【見所】
テリー・ギリアム節。


【感想】
テリー・ギリアムの監督作品なので、エンタメとして観た場合どうかな〜と思ったけれども、この映画は結構面白かった。


有名なグリム兄弟が魔女退治をしていて、その実、二人は詐欺師で、そのためにフランス軍に逮捕されて、ドイツの寒村の少女たちが消える森へ派遣される……という内容。グリム兄弟が生きていた時代は、ちょうどナポレオンが欧州を制覇していた時代らしく、科学と魔法、啓蒙と迷信が入り交じった時代として描かれている。


監督はモンキーパイソンの一員としても有名な、テリー・ギリアム。僕はこの人の作品は『12モンキーズ』を観たくらい。『12モンキーズ』はブラッド・ピットの怪演が光る作品だったけれども、ストーリーとしては何とも中途半端な作品だった。それがあるし、テリー・ギリアムの映画製作でのトラブルなどを鑑みるに、「ハッタリはあるけれどストーリーがない」人なんだな〜という印象があった。もしくは「熱意はあるが、論理的ではない」というか。それが好きな人は好きだし、嫌いな人は嫌いだろうし、正直、お笑いではその才能は光るけれども、それ以外の劇映画では短所になりかねないと思う。


ギリアムっぽいな〜と思ったのは、かずかずの不思議なギミックや美術。それと、登場人物のハイテンションな演技。特に、イタリア人拷問官カヴァルディを演じたピーター・ストーメアと、その上司のフランス軍の将軍ドゥラトンブを演じたジョナサン・プライスが良かった。イギリス人がバカにするフランス人とイタリア人のカリカチュアといった趣で。ピーター・ストーメアって最近では『ラスト・スタンド』に出てた人なんだね。あの顔面力は凄い。それと、ジョナサン・プライスザッケローニかと思った。


ストーリーはテリー・ギリアムの映画にしては、ちゃんとしている。これは、製作過程においてかなりの改変があったのが、実は功を奏していたのではないかと思う。もしくは製作総指揮のワインスタイン兄弟に首根っこを押さえつけられていたのかも。序盤のトリックなのか本当の魔術なのか判断できないところから、少しずつ魔術の世界に迷い込んでしまう展開は良かった。最強の暴力装置であるフランス軍も、女王の魔術に掛かっては手も足も出ないところとかも。


一方で、この映画ってグリム兄弟がちっとも魅力的じゃない。特に、弟のジェイコブが。演じているのはヒース・レジャーなんだけれど、ちょっとウザいと感じられるくらいの挙動不審者なのはマイナスじゃないかな〜と思う。一応、過去に馬鹿な取引をして妹を死なせてしまったというトラウマがあるのだけれど、もう少し知的なキャラクターにしてもよかったのではと。『12モンキーズ』のブラッド・ピットにも通じる部分はあるが、格好良くないんだよね。兄のウィルは、マット・デイモンが演じているだけあって、そこそこだった。でも、今作のマット・デイモンって髪が長いので違和感ありまくりだったけれど。


グリム童話のエピソードが色々と組み合わさってできているところも魅力的。グリム童話って血生臭いのだけれど、土着的な感性を刺激する部分がある。その世界観をテリー・ギリアムがちゃんと描ききった作品だと思う。