『ブリッツ』

スカパーで鑑賞。


ブリッツ [DVD]

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【ストーリー】
暴力刑事と、警官専門の殺人鬼「ブリッツ」が対決する。


【見所】
ブリッツのふてぶてしさ。
そして、警察モノには必須のバディ感。


【感想】
ジェイソン・ステイサムの映画って、どれも似たようなものだよね〜というイメージがあって、この『ブリッツ』もヨーロッパ・コープの映画くらいに思っていたら、彼が俳優としてデビューを飾ったイギリスの映画でした。観る前の期待度はそんなものだから、あまり高くなかったものの、見終わってみると見所の多い映画だったと思う。意外な拾いモノというか、脳みそ空っぽでも観ていられるというか。


街のチンピラを殴り倒すことでマスコミにバッシングされている刑事ブラント(ジェイソン・ステイサム)が、警官殺しの「ブリッツ」と対決するという話。この内容は、観れば誰でも思うだろうけれども、『ダーティーハリー』の現代版なんだよね。ハリー・キャラハンとサソリの関係が、ブラントとブリッツになる感じ。でも、ブラントには信頼できる仲間が沢山いて、暴力刑事だけれどはみだし者ではないというのがミソ。それで、今作は警官チーム(と言ってもブラントとナッシュの二人なんだけれど)が殺人鬼を追い詰める話になっている。


監督はエリオット・レスターという人。wikiを観ても、フィルモグラフィーなどは良く分からない人なのだけれど、腕は確かだと思う。ジェイソン・ステイサムはいつものジェイソン・ステイサムだった。ジェイソン・ステイサムって演技の幅(と、役柄)がほとんどないのだけれど、引く手あまたなんだよな〜羨ましい。ゲイの警部を演じたナッシュと酒を飲んで仲良くなる、というのがイギリスっぽいなぁと思った。警官側のメンバーは、元麻薬中毒患者の婦人警官フォールズを演じたザウエ・アシュトンと、仲良くなるイケメン警官ストークスを演じたルーク・エヴァンスが良かった。ルーク・エヴァンスって、『三銃士』でアラミスやった人だったのか。


でも、そういった警察の面々を敵に回しても、まだ憎たらしさに余りあるブリッツを演じたエイダン・ギレンが全てを持っていった感じ。この映画はエイダン・ギレンなくしては成り立たなかった映画だと思う。チンピラのようであり、サイコパスのようであり、知能犯のようであり、愉快犯のようでもあり、まぬけのようでもある、という難しい役柄を説得力あるものにしている。エイダン・ギレンって、『スピード』のパクリ映画の『12ラウンド』に出てた人だったか。敵役としては、よく考えれば2流の犯罪者なんだけれども、ふてぶてしい態度で実際以上の悪漢に見せている。


ストーリーについては、ブリッツが新聞記者に「8人警官を殺す」と予告しているのだから、ちゃんと8人殺さないといけないと思う。もしくは、7人殺して、自分が8人目になるというか。そうしないと、ラストのカタルシスが深まらないと思うんだよね。今のままでも面白いのは面白いけれども。もしくは、「4人殺す」とかに変えるとか、今までの殺人件数をカウントしたら7人目だったとか、色々と工夫できたはず。あと、早い段階から容疑者として浮上していて、起訴できる証拠も色々とあると思うんだよね。例えば、新聞記者が用意した5万ドルとか。


さらに言えば、ラストのあれはブラントとナッシュが、警官に化けたブリッツに気付いていたということなんだろうけれど、そこはもうちょっと明確な理由付けが欲しかった。というか、ブリッツはあそこの葬儀に参列してどうするつもりだったんだろ? 悲しむブラントを観て悦に入りたかったのか。それと、イギリスは監視カメラ社会なので、そこをどう犯罪者が潜り抜けるのか、というところがイギリスの犯罪映画の醍醐味なんだけれども、そこは甘いと思った。ブリッツが逃走するシーンで、ロンドンの街中を走るジェイソン・ステイサムは格好良かった。イギリス映画は走るシーンが出てくるとグッと面白くなるよね〜という印象。