『スーパーサイズ・ミー』

スカパーで鑑賞。


スーパーサイズ・ミー [DVD]

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異色のドキュメンタリー映画ということで、題名と内容は知っていたけれども、こうして初めて観てみると知識だけのときとは違う問題意識が生まれてくるなぁと思った。


ジャンクフードの人体に対する悪影響を証明するために、監督のモーガン・スパーロックが30日間マクドナルドのハンバーガーのみを食べるという内容。知られているように、アメリカは肥満大国で、ちょっとびっくりするくらいのデブがいる一方、外食産業の勢いは右肩上がりでとどまるところを知らないかのようだ。そして、マクドナルドに代表されるファストフード業界が、アメリカ人の肥満化を、政府に圧力を掛けたり、学校給食に参入してまで利潤追求の名のもとに推し進めている……というのは良く知られている。


個人的なことを言えば、僕は去年まではそこそこ太っていて(85kgだった)、今年に入って断固とした決意で15kgの体重を落とすことができた。営業の仕事をしていたときは、なんというか食べることでストレスが消えるという感覚を経験したこともあるし、コンビニで買った食べ物を食べて具合が悪くなったこともある。そういうわけだから、モーガン・スパーロックのチャレンジがどういうものか身にしみて分かっているつもりだった。


けれども、実際に『スーパーサイズ・ミー』を観ていると、なんというか逃げ場のない養鶏場でひたすらアメリカ人という家畜を太らせる現実に圧倒されてしまった。ダルマのような腰回りと尻、ひたすら運動不足、ひたすら食べる。マクドナルドの子供を狙った広告戦略やイメージキャラクター、店舗づくりにハッピーセットに至るまで、これを観ると笑って「そんなに太るのが嫌なら食べなければいいじゃん」とは言えないし、道義的にも法律的にもファストフード業界に責任がないとは言えないよなぁと。


面白かったのは、スパーロックの健康状態をチェックする医師たちが、最初は「体重が太ったりストレスが溜まるくらいじゃないの?」と楽観的な様子だったのに、30日経ってみると出てきた数値に生きるか死ぬかみたいな感じになっていたこと。ただ、このチャレンジに反論があることはスパーロック自身も劇中で認めていて、たとえばビッグマックばかり食べて健康な人も出てくるし、映画のラストにはちゃんと当て嵌まらない場合もあるという言及があった。


ただ、ドキュメンタリー映画というのは中立公正であるべきというルールはなくて、ただ問題意識が先にあるからこそ作られるわけだから、それを勘案するとそこそこ公平ではないかと思う。ちゃんとマクドナルドに取材の申し込みをしているし。それにこの映画が作られてから、ファストフード業界にも健康志向の波が訪れたわけだから、まったくの無駄というわけでもないと思う。事実として、30日マクドナルドを食べ続けると、体重が10kg以上増えたというのは打ち消しがたいわけだし。


衝撃的だったのは、食べ物やコーラの中に含まれている砂糖の量! 30日であれだけのものを食べたら、誰だって糖尿病一直線だよねぇ。しかも、劇中には2リットルソーダを日に何本も飲んでいた男が、失明して入院、胃のバイパス手術を受けるという食欲激減の映像まであるし。アメリカ人にとってポテトは野菜なんだよね〜。そりゃ太るわ。あと、サブウェイの広報担当者が講演会をしていて、それを聞いて感動していた女の子が「でも、私には無理」と言ってるのを観ると、病める超大国アメリカのトップとボトムを見たような気になる。