『パラダイス・キス』

テレビで鑑賞。


パラダイス・キス [DVD]

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【ストーリー】
地味な少女が、色々あってモデルになる。


【見所】
エセ天才の描き方!
でも、向井理は良かった。


【感想】
憤慨するかな〜と思いながら観ていたけれども、案外、ディズニー的なストーリーで観賞に耐えれた。期待値が低かったのが良かったのかも。


結局のところ、女性映画っていうのは女子が決断に至るまでの過程を「私は悪くない、流されて」的な描き方をして、ポイントポイントで決断をするということを描けば、そこそこの勝ち目が出てくるよねということを再確認した。原作は矢沢あい、主演が北川景子向井理という隙のない布陣で、ひたすらファンタジーを描くことに徹している姿勢は……まあ、成功じゃないかなぁ。


この映画の一番悪いところは、主人公の少女(北川景子)の人生を狂わせるパラダイス・キスの面々が、「それでもいいんじゃねーの?」と思っていそうなところだと思う。そこは背負えよ! 全力で死ぬ気で背負えよ! 卑怯者か! と中盤まで思ってました。これ終盤はオールOK展開になってるから良いけれど、一歩間違えば北川景子キャバクラ嬢とかになるんじゃないかなぁ。テーマと倫理が一致していないと感じるのは日本映画では良くあるんだけれど、それはたぶんストーリーのバランスを取るのが下手だからだと思う。


向井理が「天才」って役所なんだけれど、ぜんぜん「天才」っぽく見えねーというのも問題だと思った。これは、脚本の問題。ファッションショーで、(努力型の)ライバルの服と(天才型の)向井理の服の理屈付けがないし、決断のストーリーなのにファッションショーではそれがないんだよね。というか、ファッションショーってなんのためにやってるの? あれでプロの道が開けるとか全然ない(みんなもう就職決まってるし)し、ファッションショーがクライマックスかと思ったら、まだ一山あるし。なら物語上なくてもよくない? 良くあるストーリーでも、やっぱり納得できるものを作り上げるっていうのは難しい。


それ以外はまあまあ鑑賞に耐えれる。登場人物の見栄えは良い。向井理はこんなバカっぽい役を、本当に真剣に演じていて尊敬してしまう。北川景子は最初からビッチっぽくて微妙だな〜と思っていたけれども、中盤からはやっぱり花があるよね。役者はみんなそこそこだったけれども、賀来賢人の演技は酷かった。もっと抑揚を効かせろよと。あと、こういう話で「親」というものを出すのだったら、それはラスボスであるべきだと思うんだけれど。なんか流されてなあなあになってるんだよね、全てにおいて。


ストーリーは、水と油だった男女が、少しずつ共通点を見つけるところが良かった。ハーレクイン的な、ヴァンパイア小説的なジャンル性も良かったと思う。モデルやファッション業界のドロドロなんか一切描いていないお菓子性も悪くない。一方、ファッションショー後は正直蛇足。エンドロールの写真みたいな演出でも十分だと思う。テーマと内容の倫理性の噛み合わせが悪いのがマイナス点。もう少し頑張ればいいのに、というのが僕の最終的な感想だったりする。