『孫文の義士団』

スカパーで鑑賞。



【ストーリー】
辛亥革命の協議のために香港にやってきた孫文を守るため、大商人リー・ユータンが結成した義士団が清朝の暗殺団と対決する。


【見所】
1時間続くアクション!
そして男たちの死に様。


【感想】
面白いという話は聞いていた。そして、期待以上の面白さで大満足だった。


物語は義士団の結成と、義士団と暗殺団の対決の大まかに2部構成になっている。仲間を募って、その仲間で敵との死闘を繰り広げるというのは、有名どころで言えば日本映画で言えば『7人の侍』とかがそうだったし、ハリウッド映画で言えば『アンタッチャブル』だ。この映画は、ラストの人力車が階段落ちするという、『戦艦ポチョムキン』みたいなシーンがあるのだけれど、これは物語の構成から言って『アンタッチャブル』のほうのオマージュなのかなぁと感じた。


監督はテディ・チャン。僕はあんまり知らないのだけれど、ジャッキー・チェン主演の『アクシデンタルスパイ』とかを監督した人らしい。アクション映画からスタートして、ファミリーものの映画でも結果を残しているというフィルモグラフィーから、『孫文の義士団』の前半は人間ドラマを、後半はアクションと死に様を撮るという任務には適した人材だと思う。特にアクション演出に関しては相当手慣れたものを感じた。


役者陣も良くて、毎回ボコボコになるドニー・イェンとか、こいつだけ武侠映画から飛び出したようなレオン・ライとか、「デカい! 説明不要!」なメンケ・バタールなど、とても印象に残るキャラクターになっていた。メンケ・バタールはバスケット選手なのか。スイカで敵の頭をダンクシュートしたのは笑った。ドニー・イェンは『イップ・マン』でもそうだったように、今回もボコボコにされる役周り。レオン・ライは「一番鬼門のところを任せてくれ」みたいなことを言ってて、あれ? 出てこないな〜と思っていたら、いきなり全てを攫っていくような大活躍ぶりだった。


でも、前半は人物の描き込み不足、後半は物語の失速があるような気がした。特にドニー・イェン演じるシェン・チョンヤンと、暗殺団のNo.2のチェンシャンが対決するシーンについては、人力車を守るというところから外れた場所で戦っているので話が止まっていると感じられた。あと、大商人のリー・ユータンが命狙われないので、ドニー・イェンの活躍が空回り気味なのよね。逆に、レオン・ライのアクションシーンは、15分時間を稼ぐという目的が明示されているので、命を掛けた奮闘にも意味があったと思う。


敵方もえげつなさ満載の暗殺技が光っていた。特に、前半の襲撃シーンと、後半のボウガンを撃ち込んでいくところから、メンケ・バタール演じるフーミンを滅多突きにするシーン! フーミンが滅多突きにされたあとで、まさかの再登場したところは、この映画で一番燃えるところだった。敵もいきなり白兵戦を仕掛けるのではなく、遠距離から狙い撃ちしていくのも暗殺団っぽい。あと、演出については「孫文到着まであと三日」みたいなカウントダウンがある前半と、義士が死んだところでの紹介文が、個人的には気が利いているな〜と思った。


義士の人たちは孫文や中国のためではなく、個人の繋がりや敵討ちのために集い死ぬ。そこが、この映画の面白いところ。大義とか良く分からないが、義侠に殉じる覚悟のある男たち(女もいるけど)の死によって革命が成し遂げられた、というのは辛亥革命も市井の人間の血によって成功したという象徴として描いているのだと思う。