『アルティメット』

スカパーで鑑賞


アルティメット [DVD]

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【ストーリー】
近未来のパリで、爆弾が盗まれ、悪人たちを押し込めたゲットー(B13)に運び込まれた。警察官のダミアンはB13出身のレイトとともに爆弾解除に向かうが……


【見所】
パルクールアクション!
あと、ヨーロッパコープお得意の、ちょっと近寄りたくない男たち。


【感想】
あの『96時間』を監督したピエール・モレルの監督デビュー作。ピエール・モレルはカメラマン出身だけあって、動きのある画を撮るのが上手い……ような気がする。この作品が評価されて、『96時間』の監督をするわけだけれども、この作品も面白いな〜と思うエッセンスが沢山あった。


ストーリーはよくあるタイムリミットサスペンス。レイトに「妹を助ける」という目的があるけれども、主眼は爆弾を止められるかどうかというところ……なんだけれども、この爆弾が爆発する、しないのサスペンス的なところはほとんどない、と言ってもいい。ストーリーは二転三転するけれども、それは二転三転するために二転三転させているところが、ヨーロッパ・コープのヨーロッパ・コープらしさと言える。要するに、アクションを見せるためにストーリーを動かす映画なわけで、そうすると質が低いように思われるかもしれないけれども、今作の場合はパルクールアクションが度肝を抜くので、この割り切りは正解なのかもしれない。


とにかく、脚本は杜撰の一言。それがヨーロッパ・コープらしいとも言える。特に終盤のタハが殺されるあたりから、ストーリー運びがどうでもよくなる。タハの口座の金が全額下ろされて(って、普通ならあの経理の人間に「お前が横領したんだろ!」というだろ)、部下に撃ち殺されて、K2が「狩りの時間だ」と言って追い回すけれども、実際は爆弾を止めるために(爆弾を止められるのはダミアンだけ)追い掛けていたという話になり、いざ爆弾を止めるために廃ビルに入ると大男(この辺りがヨーロッパ・コープテイスト)が待ち構えていて、そいつを撃破(一刻を争うのに戦うのもヨーロッパ・コープテイスト)して爆弾を止めようとするけれども、実際は教えられたコードはB13を爆破するための起爆スイッチだった……という、ちょっと考えるといろいろと変な部分が立て続けに起こる。


でも、パルクールアクションがとても凄いので、観ている最中はそれがどうでもよくなる。自動車を飛び越えたり、ビルを上ったり、障害物だらけの街を無人の荒野のように走るのは、観ていて「うおーすげー!」となる。ああいう肉体の動きはインドネシア映画『レイド』でもそうだったけれども、観ていて飽きない楽しさがあると思う。あと、こういう映画特有の「いかにも悪そうな男たち」表現が面白い。暴力団の暴力部隊ってあんな感じなんだろうな〜という、なんというか体育会系の寄宿舎みたいなアジトと、がたいのいい男たちの「頭悪いけれども、やってることも悪いです」感がとても良かった。


というわけで、映画としての質はそんなに高くはない。でも、見終わったあとに「良かったな〜」と思えるのは、最後の落とし前をちゃんとつけて終わるからだと思う。この辺りはピエール・モレル監督の力量じゃないかな〜。フランスのいかにもエリート官僚な上官をぎゃふんと言わせるラストは良かった。ヨーロッパ・コープの映画って、杜撰なところは本当に杜撰なんだけれども、時間も資金もないなかで売れるものを作るという割り切りができているな〜という印象。良くも悪くもだけれど。で、今作については、良いところが悪いところを覆い隠していて、何も考えずに鑑賞するには丁度良い面白さがあると思った。