『シュガー・ラッシュ』

映画館で鑑賞。



【ストーリー】
テレビゲームの世界で、30年間悪役をやってきたラルフが、レースゲームの女の子と世界を救う。


【見所】
全部!
やばい。これは超面白かった。


【感想】
今年、観た映画の中では、暫定一位です。


8ビットのドンキーコングみたいなゲームの悪役「壊し屋ラルフ」が、悪役でいることに疲れ、自己の承認とより良い生活を求めるが、それが予期しない大騒動を巻き起こしてしまう……という内容で、ディズニー映画なんだけれども、非常にピクサーっぽい話だった。現在、ディズニーアニメのトップがジョン・ラセターなので、やはりその色が出ているのかなぁと思ったり。「現実と理想の狭間で悩んで成長する」というテーマは、他でも沢山語られているけれども、『トイ・ストーリー』などで繰り返し描かれているところ。その2012年度版はどうかというと……


もうね、満点ですよ!


オープニングの『蒸気船ウィリー』が8ビットで出てくるところから、もうコンシュマーゲームで育った僕としては、一気に物語に引き込まれて、そこから少しも飽きることのない2時間だった。特に、悪役たちの集団セラピーと30周年パーティーが終わって、FPSゲーム『ヒーローズ・デューティー』の世界にラルフが行くあたりから大爆笑してしまった。到るところにちりばめられたゲームの小ネタが面白いし、とにかく脚本が超洗練されている。シュガーラッシュの世界に来てからの展開も、少しも中だるみがなく、伏線を上手に処理して終わるという、名人芸を観させられたという満足感が凄い。


僕が上手いなぁと感心したのは、「ターボする」という序盤からでてくる言葉が、その説明をラストのほうまで何段階にも分けて引っ張っていること。最初は、なんとなく「こういうことかな〜」と思っていたことが、「それって最悪なことじゃん!」ということになって、「え〜お前がそうだったの?!」という展開になるというストーリーの三段活用。上手いストーリーとはこういうことを言うんだよ〜と、ディズニーに教えられるような気がした。また、ちゃんとキャラクターがキャラクターの持つ特性(ラルフなら壊す、フェリックスなら直す)を存分に駆使して物語を進めていくのも良かった。外れかけの鉄格子をハンマーで叩くと、太く強化されたりw


あと、やっぱりヴァネロペが可愛くて最高だった。最初はちょっとウザい感じがするのだけれども、ストーリーが進むほどに感情移入してしまう。アメリカ映画ってこの「最初はちょっとどうかと思うけれども、途中から愛おしくてたまらなくなる」系のキャラクター作りが超洗練されているなぁと感心してしまった。ただ、主要キャラクターは全員良い味だしているけれども、主要じゃないキャラクターはちょっと掘り下げが甘いような気がする。『フィックス・イット・フェリックス』のアパートの住人とか、『シュガーラッシュ』の他のキャラとか、他の悪役たちとか、ちょっとずつでも見せ場があればよかったのにね。


監督のリッチ・ムーアは、あの『シンプソンズ』の監督をした人らしい。たしかに、初監督作品とは思えない手練れな感じがあった(ザンギエフの声も担当しているらしいけれども、そもそもザンギエフって悪役ではないよね……)。さらに、ゲーム愛にあふれた描写、コナミコマンドからFPSゲームのらしさまで、この「分かってる」感があるからこそ、この素晴らしい作品ができあがったのだと思う。あと、特筆したいのが、シュガーラッシュのテーマ曲にもなっているAKB48の歌! 僕はAKB48が好きでも嫌いでもない(興味がない)のだけれども、この劇中曲はゲームの世界にマッチしていて、とっても良かった。


ストーリー的な難点で言えば、サイバグがビーコンで焼かれるという設定がもう少し分かりやすく説明されていればな〜と思った。個人的に好きなのは、カルホーン軍曹の男勝りだけれども、過去のトラウマに囚われているところ。結婚式の最中に新郎がサイバグに襲われるってどんなだよ、と思いながら、ラストのあのレーザーポインターで大爆笑。もう、本当にゲームの世界を思う存分楽しんだという感じ。エンドロールのビット画を見て、ちょっと感動のあまり泣きそうになったほど。それくらい良い映画だった。


同時上映の『紙ひこうき』は、なんだか手塚治虫の短編漫画を見ているような気になった。特に語ることはないのだけれども、ラストのディズニーのマークのアーチが紙ひこうきになっているのは、「おしゃれやな〜」と思う。