『ジャンゴ 繋がれざる者』

最寄りの映画館で今日が最終日だったので行ってきました。



【ストーリー】
南北戦争前夜、ひょんなことから賞金稼ぎになった黒人奴隷ジャンゴが、悪逆な奴隷主から妻を助ける。


【感想】
見る前は、3時間もある映画を観るのは辛いかなぁと思ったけれども、いやいやどうして、最初から最後までタランティーノの手の平で弄ばれるように夢中になった3時間だった。


ジャンル映画にこだわるタランティーノが今回はマカロニウエスタンを題材にした……と言われているけれども、マカロニっぽさは最初の「ジャンゴ〜」の歌と舞台背景くらいで、どちらかと言えばブラックスプロイテーションの系譜のほうが強いのではないかなぁと思った。ストーリー的にも『続・荒野の用心棒』はあんまり関係ない。一回、敗北寸前まで追い込まれて、そこから逆転するくらい?


南北戦争直前の、アメリカの南部というと「風と共に去りぬ」のようなイメージがあるけれども、この映画で語られているようなことは普通にあったのだろうと思う。まったく弁護の余地のない、本当に酷い話が、つい200年前のアメリカで行われていた(ことによると公民権運動が起こるつい最近まで)。でも、これまでおおっぴらにそれが映画で語られてこなかったのが、今回、はじめて真正面から描かれたというエポックな作品らしい。


主人公のジャンゴを演じたジェイミー・フォックスも良かったけれども、演者で特に特筆されるのはシュルツを演じたクリストフ・ヴァルツだった。『イングロリアス・バスターズ』でランダ大佐を演じてオスカーを取って以来、癖のあるゲス野郎を演じることが多かったけれども、今回は180度違う超人格者でびっくりした。でも、タランティーノ特有のしゃべりのパワーで事態を泳ぎ切ろうとするのは同じ。序盤の酒場でのシークエンスには度肝を抜かれた。


クリストフ・ヴァルツがこの役で、再びオスカーを受賞したのも納得の名演だった。また、残忍な奴隷農場主を演じたディカプリオと、彼を裏で操る黒人執事のサミュエル・L・ジャクソンも良かった。あの黒人執事の、表では馬鹿な老人を演じて、裏では農場主とも対等なパワーを持っているところとか、『パルプ・フィクション』以来の怖さが感じられた。


南部の奴隷農場で行われている残虐非道な行いの数々には、本当に義憤を感じさせるものがある。だからこそ、あのシュルツがキレて、ジャンゴが大暴れする終盤は本当に胸がすくようなカタルシスでいっぱいになった。しかも、ちゃんと師匠と弟子の関係が示される(あの鉱山送りになるところのトークは最高だった)んだよね〜タランティーノ恐るべし。


とにかく、あっという間の3時間だったし、音楽も血飛沫舞うアクションも最高だった。とにかくテンションが上がるし、満足感から言えばタランティーノ映画の中でも随一だと思う。難点は特にない。マカロニ・ウエスタンや西部劇を見慣れていなくても大丈夫。唯一、アメリカが黒人奴隷を酷使していた歴史を持つ国、ということは知っておいたほうがいいかも。


あと、今回は千円デーだったので、映画のパンフレットも購入した。タランティーノ映画をより理解するための用語解説集とかがあって、とても良くまとまったパンフレットだと思う。デザインもカッコいいし。