『イリュージョニスト』

スカパーで鑑賞。


イリュージョニスト [DVD]

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【ストーリー】
イギリスで、老手品師と彼を魔法使いと信じる少女との出会いと別れ、時代の終わりを描く。


【見所】
ジャック・タチ脚本・主演のジャック・タチ映画が21世紀になって見ることができるというイリュージョン。シルヴァン・ショメ監督のアニメは観ていて気持ちいい。


【感想】
『ヴァルヴィル・ランデブー』で「日本よ、これが世界のアニメーションだ」と示して、レイトン教授シリーズのビジュアル観にも影響を与えたシルヴァン・ショメ監督の第二作。フランスの喜劇映画監督ジャック・タチの脚本をアニメーションで映画化している。


ジャック・タチの映画は観たことないけれども、チャップリン的な喋らないで動作や所作で笑わせるタイプの喜劇作家だということは知っていた。なので、よく言われるように、アニメーションでジャック・タチ主演の映画を作るという冒険は、かなり相性の良いものだと感じられた。あと、同じフランス人なのでコメディセンスを共有しやすいという利点もあったと思う。


イギリスが舞台。テレビとロックンロールが一世風靡しようとする時代で、昔はブイブイ言わせていたけれども、今ではドサ回りをしている老手品師の悲哀を描くのだけれど、これがまたハッピーにはならない結末に向けて、実に物悲しく終わっていく。手品の仕事も、少女も捨てた老手品師は汽車に乗ってどこに行くのだろう?人生はそういうもの、という諦観が、タチにもショメにもあるように思える。


というか、『ベルヴィル・ランデブー』も、お婆ちゃんたちの大立ち回りという痛快さはあるけれども、その裏にはマフィアがやってる死の地下ロードレースやら、自転車を漕ぐ機械のような息子(しかも選手としては2流)やら、とにかく救いのない描写があった。その辺りがアメリカとは一味違う、フランスの世界観ということなのかなぁと。


アニメーションの絵は超一流だと思う。バンド・デシネ的なビジュアルと、CGをうまい具合に組み合わせているし、セリフを喋らない老手品師を動きだけで心情まで表現できている。スコットランドの村の人物や、ホテルに住むピエロや腹話術師、軽業師など、動きだけで笑える部分がたくさんある。でも、時代というどうにもならなさが彼らを終わりへと導いていく。


少女も、老手品師を魔術師と勘違いしているだけで、いい男ができるとそっちに行ってしまう。この話って、タチの忘れ形見とのあるはずだった20年(養育して、成長して、結婚するまで)がマッハで通り過ぎてしまう話なんだと思う。とにかくしんみりしてしまった。こんな映画を作ってしまうショメ恐るべし!と思った。