『真珠の耳飾りの少女』

スカパーで鑑賞。


真珠の耳飾りの少女 通常版 [DVD]

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【ストーリー】
17世紀のオランダで、フェルメール邸に来た召使いの少女が、『真珠の耳飾りの少女』のモデルになる。


【見所】
絵画的映像美!
これはちょっと凄いと思った。生身の人間が絵画的映像と渾然一体になる衝撃。この映画を撮るために、カメラやセットを絵画的に見えるにはどうすればいいか、超工夫している。


【感想】
フェルメールのムッツリぶりに共感した。


オランダではレンブラントと並び称されるフェルメールの代表作『真珠の耳飾りの少女』は、その来歴や誰をモデルにしたのかなどが一切不明の絵画で、それでありながら鑑賞する人間を捉えて放さない一瞬の美が凝縮されていて、画家の一世一代の傑作といってもいい作品だと思う。


原作は謎の多いこの絵を大胆にストーリーテリングした小説。その映画化なんだけれども、フェルメール的世界観というか、絵画のような映像美がこれでもかと詰め込まれた作品になっている。アカデミー賞の撮影賞と美術賞を取ったのも納得だった。といっても、最初は時代劇にありがちなセットを組んでの(舞台の背景に富士山とか描いたりする系の)撮影かな〜程度に思っていたのだけれど、途中からどこからどこまでが背景画なのか分からなくなって、しまいには絵画の中の世界で人間が動いているような感覚さえあった。


ストーリーはフェルメールについて分かっている部分は忠実に、分かっていない部分は大胆に脚色している。パトロンのライフェンとか好色なスケベオヤジとして描かれているけれども、実際のところはどうだったのか? フェルメールの気難しそうで女性の尻に敷かれているキャラクターとか、厳格な義母と嫉妬に駆られる妻など、一つ一つの人物造形は原作小説が作り上げたものを良く映像化していると思う。


監督はピーター・ウェーバー。この人は日本語ウィキには来歴が載っていないけれども、最新作はトミー・リー・ジョーンズが宇宙人ではなくダグラス・マッカーサーとして日本に降り立つ『終戦のエンペラー』らしい。『真珠の耳飾りの少女』のあとは『ハンニバル・ライジング』という180度作風が違うじゃないか! とツッコミが入るフィルモグラフィーで、ハンニバル・ライジングも日本が舞台だったりするから、日本趣味の持ち主なのは確かなのかな。


俳優陣は主人公の召使いを演じたスカーレット・ヨハンソンと、フェルメールを演じたコリン・ファースがとにかく良かった。スカーレット・ヨハンソンは『真珠の耳飾りの少女』にしてはちょっと痩せすぎじゃないかと思ったけれども、モデルになったときのシンクロは超凄かった。自分をモデルにした『真珠の耳飾りの少女』を観て「心まで描くのですか?」と言ったセリフにノックアウト。肉屋の青年と恋仲になるのは、良く分からんけれども。コリン・ファースは『英国王のスピーチ』でもそうだったように、心に葛藤を抱えた中年男性を演じると輝くね。


とにかく、映像美が凄い。メイキングを観てみたい! と強く感じさせる1作だった。