『ハナミズキ』

テレビで鑑賞。


ハナミズキ スタンダード・エディション [DVD]

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【感想】
去年、僕が観た最低の映画は『阪急電車』なんだけれど、その『阪急電車』っぽい感じかな〜と思いつつ、同じ時間の『ツーリスト』は以前観たことがあったので、毒を食らわば皿までの精神で観てみたら、それなりに楽しめたのでビックリ。たぶん恋愛を主軸に置いているからだと思う。


女性向きの日本映画には「泣きスイッチ」という演出方法があって、エモーショナルな映像とエモーショナルな音楽を合わせると、誰が何をしていようが観ている人がウルっとくる……という、観客をバカにしくさったものがあって、それが一種行き着いたところにあったのが『阪急電車』だった。『ハナミズキ』は『阪急電車』の前年公開の映画で、そう考えるとまだ手法的に誠実さというか、大河的な恋愛映画を真面目に創っているという真剣さがあったと思う。


監督は土井裕泰さんで、この人の映画を観るのは今回がはじめて。脚本も監督もテレビドラマを中心に作っていた人たちで、なんとなく12話のドラマを2時間に纏めたような感じがするな〜というのは、そういう理由があるのかもしれない。でも、それが悪いというわけではなくて、今回は製作者側の土俵にちゃんと観客を乗せることに成功していると思う。脚本については、『起承転結』をこれほど忠実に守っている作品は久しぶりに観た。たぶん、12話のドラマを2時間に纏めたような話なので、起承転結をしっかりしないとダイジェストになりかねないという考えがあったのでは? なかなか時間軸が長い話って起承転結を付けづらいと思うのだけれども、この恋愛話を破綻なく展開させて纏めたのはプロの仕事だと思う。


役者陣は誰も良かったけれども、一番印象に残ったのは薬師丸ひろ子だった。あの軽い感じの母親像はなかなかなくて新鮮。生田斗真新垣結衣は観客が感情移入できる程度には自然体で演技していると思う。さすがに10分から15分ごとにエモーショナルな見せ場があると、いい加減にしろと言いたいところも出てくるけれども、そこは目まぐるしく替わるストーリー展開でなんとかカバーできているし、美男美女が画面にいるとそれだけで映えるよねと。


ストーリーについては、もう少し深い分析ができそうなんだけれど、思考がまとまらないので割愛。主人公二人の別れが「仕方のないこと」の結果になっているのは、個人的にはちょっと不満がある部分だった。運命に翻弄される、というのは分かるけれども、効果的かというと……そう考えると、生田斗真が漁師として一人の男として色んなことに決着を付ける描写が少しは必要でなかったかなと思う。今のままでは故郷に帰っても肩身が狭いだけじゃないかとか、いらぬ心配をしてしまった。あと、主人公の妹は(10年くらいの話なのに)成長していないよね?


そんなことはさておき、とりあえず、僕のような人間でも、思ったよりも楽しめた。28億円の大ヒットも納得できる出来の映画だと思う。