『少林サッカー』

テレビで鑑賞。もう見たのは3回目くらい。




【ストーリー】
昔は少林拳の達人だったダメ人間たちがサッカーチームを作って再起する。


【見所】
日本よ、これが世界レベルのベロベロバーだ!
チャウ・シンチーの研ぎ澄まされた小学生的ギャグセンス。


【感想】
ヒドい!


あらためて観ると、そうとしか表現しようのない映画だった。でも、このヒドいというのには、良い意味でも悪い意味でも、という但し書きが付く。コメディとしての質は、昔のジャッキー・チェンの映画や、ハリウッド映画に比べるまでもなく低くて、ライムスター宇多丸師匠の言うところの「ベロベロバーで笑わせようとしている」ものなんだけれども、アジアNo.1のベロベロバーだったら、それはそれで面白いし笑えると思うのだ。


少林拳の達人がサッカーやったら無敵じゃね?」とアジア人なら誰しも考える安直なアイデアを、CGとワイヤーアクションと際限ないインフレーションとギャグで押し通したチャウ・シンチーはヒドくて偉い! これを創るのは、周囲に安直なアイデアを納得できるだけのパワーがいるはずで、コメディ役者としてキャリアを積み重ねてきた彼だからこそできる映画だったと思う。アメリカだったらアダム・サンドラ−しかできない荒技。


で、映画のストーリーはどうかというと、誰でも分かるくらい簡単な内容になっている。かつて栄光から転落した男が、同じく栄光を求める男たちの助力を得て、復活のための戦いに出るというもの。ただ、実際のところ、ダメ男たちの再起のストーリーは彼らが少林拳の奥義を取り戻したところで実質終わっていて、そこからの破竹の快進撃は物語上は蛇足でしかない。それはチャウ・シンチーにも分かっていたらしく、じゃあどうしたのかというと……まさかのダメ女の再起のストーリーに軸足が移っていくのよね。


ただ、この映画はコメディ部分の尖ったところをまったく隠す気がないので、笑える(とチャウ・シンチーが判断した)序盤から中盤にかけての登場人物のダメさが、ちょっとリミットを超えたところまで描写されているのは、評価が分かれるところだと思う。正直、1回目は大爆笑できるけれども、2回目3回目はちょっと笑えない部分もでてくるのではないか、というくらい破壊的。それにチャウ・シンチーのギャグセンスが小学生が「うんこうんこー」と言って笑うようなレベルを、究極にしたようなものなのも冷静な大人に戻ってみると受け入れられない部分があると思う。


実際、『カンフーハッスル』で本当にうんこする人が出て以降、チャウ・シンチーも映画人として模索しているのか、作品が激減している。要するに飽きられるのも早かったということではないだろうか。あと、『少林少女』や『ドラゴンボール エボリューション』という映画史に残る大駄作に関わったという汚点を消し去ろうとしている努力の最中なのかもね。


あと、悪役のオッサンがやしきたかじんそっくりなのは特筆もの。