『デイブレイカー』

スカパーで鑑賞。


デイブレイカー [DVD]

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【ストーリー】
人間不足に悩むヴァンパイア社会で、製薬会社の研究員が人類の生き残りと治療法を求める。


【見所】
ウィリアム・デフォー!
サム・ニール
イーサン・ホーク
B級なのに豪華な俳優陣。


【感想】
まあまあ面白かった。


ヴァンパイアが9割の社会になり、人間(の血液)不足が問題化した世界、という設定がまず面白くて、この映画の魅力の半分はここにあるような気がする。一種のディストピア世界を描いていて、ヴァンパイア映画特有のハイセンスな居住空間とか、太陽を浴びると炎上するヴィジュアルとか、ダウナーな映像とか、とにかくジャンル映画のキモを分かっている人たちが作成しているな〜ということが感じられた。


で、もう半分は、誰がどう観てもB級映画なのに、演じている人たちが豪華ということ。まあ、主演のイーサン・ホークも、ウィリアム・デフォーも、サム・ニールもB級感漂う人たちなんだけれども、B級にはB級の作法があって、こういう人たちが出ているだけで輝きが増すというもので。しかも、今作は3人が主人公−人間−ヴァンパイアを代表する人たちになっていて、かなり物語を動かすかたちになっているというのも見所だと思う。普通、彼らレベルの俳優であれば、ちょっとだけの出演でお茶を濁したりするものなのに、この映画はとにかく出し惜しみしないところが気に入った。


というわけで、物語としては『マトリックス』や『地球最後の男』をはじめとするヴァンパイア映画のエッセンスを集めたものになっている。ヴァンパイアが長らく血を吸わないでいると、理性を失った怪物になるというのは『ブレイド2』のリーパーみたいなものか。「人間農場を経営している製薬会社」というヴィジュアルは『マトリックス』まんまのえぐさがあるけれども、あれを効率的に運用すれば、食糧危機なんて起きないだろうにねぇと思ったり。もしくは、血液輸出国として中国やインドがアメリカを凌駕するだろうから、社会の雰囲気も中国的だったりインド的だったりしないかなぁ……とか、面白い設定はいろいろと僕の心を刺激してくれる。


物語は冒頭の少女の焼身自殺から、ラストの阿鼻叫喚の共食い地獄まで、ゴアな描写がかなりあるけれども、ホラー度でいえば低め。イーサン・ホークは『その土曜日、7時58分』でアホでヘタレな男を演じて、今作もかなりヘタレな感じなので、ヘタレ役者としての貫禄がついてきたのかなぁと思ったり。あと、弟役のマイケル・ドーマンが、あの言うことを聴かない肉親役として、個人的にはいい感じだった。


でも、正直、俳優陣で金を使いすぎたのか、物語的にはそんなに盛り上がることなく終わってしまったかなぁという印象。もっとサスペンス的な盛り上がりがあれば……と思ったけれども、そういうのが希薄なのもB級っぽくて嫌いではない。