『ブロンソン』

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ブロンソン [DVD]

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【ストーリー】
「英国で最も有名な犯罪者」マイケル・ピーターソンの戦いを描く。


【見所】
トム・ハーディのアドレナリン演技!
そして、肉体美。マッチョ、というのはこういう肉のことを言うんだよな〜


【感想】
殴って殴って殴りまくる90分。


大暴れ! という表現が一番しっくりくる映画だった。監督は『トライヴ』のニコラス・ウィンディング・レフン、主演は『ダークナイトライジング』のベイン役を演じたトム・ハーディ。この映画がトム・ハーディの当たり役になったらしく、その後のキャリアアップにも繋がったらしい。確かに、この映画を観た後で、「トム・ハーディがベイン役をやるってよ!」って聴いたら、「マジで!」とテンションが上がりまくったと思う(クリストファー・ノーランもそのつもりだったと思うし)


『ドライヴ』で日本では有名になったレフン監督は、その前のこの映画で世界をガツンと言わせたらしい。映画館で公開されていなかったから、DVD化が待たれていたけれども、ようやく販売されることになった。凄い凄いという評判は聞いていたので、どんなものかと思いつつ、キービジュアルのスキンヘッドにしたトム・ハーディの肉のインパクトが強くて、これは当たりかもしれないと思ったら本当に当たりだった。


実在する犯罪者、マイケル・ピーターソン(通称ブロンソン)の戦いの半生を描いているのだけれども、古代の剣闘士奴隷ならともかく、現代のイギリスでこんな生き方をしている人間がいるとは思えないほど強烈だった。とにかく暴力衝動が強すぎて、息をするように殴る男、それをトム・ハーディが生き生きと演じている。この映画はピーターソンの半生を描いていて、はっきり言えば物語的な起伏はないのだけれども、オスの本能を剥き出しにした男が、腕力だけで社会と戦うというのは、男の僕が観れば「燃える」ものだった。たぶん、長いボクシングを観ているようなものだと思う。


さらに、この映画はニコラス・ウィンディング・レフンの映像美が冴え渡っていて、画面の一つ一つが超美しい。計算された様式美を感じるというか、監督の映像テクニックによって現代のイギリスでありながら、神話を観ているような感覚になった。この映画は現代に生きる神話を描いているのだと思う。古代なら、ピーターソンはヘラクレスのような英雄になれただろうけれども、現代では、四角い檻のなかで息も絶え絶えな囚人(もしくは道化)になるしかない。ニコラス・ウィンディング・レフンって俳優を含めて将棋の駒のように計算した絵を作る人なんだな〜と感心した。緩急の付け方とかも上手いし、音楽の使い方にも酔いしれてしまう。


刑務所の所長に「なにが望みだ?」と聴かれて、逆ギレするピーターソンが物悲しい。中身が空っぽの野獣は、たぶんアフリカの荒野で裸で生活すれば人生の充足が得られるのかな〜と思うラストだった。もしくは、マスクを付けてバットマンと戦うような人生こそ相応しかったのかも。不器用だけれど、人並み外れた肉体をぶつけて「戦う」ことで自分を表現する。その姿には胸を打つものがあった。


反対に、女の人が観れば、馬鹿な男の破滅の話にしか映らないのかもしれない。こればっかりは仕方ないよね。そういう映画だから。