『感染列島』

テレビで鑑賞。

感染列島 スタンダード・エディション [DVD]

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【ストーリー】
未知のウィルスに感染した人が死にまくる。


【見所】
日本映画としてはスケールのでかさは評価したいところ。
でも、スケールがでかすぎて、撮影している人たちの手に余るものになっている。


【感想】
あれ? 思ったよりも酷くない。


というのが僕の感想です。『阪急電車』や『プリンセストヨトミ』レベルかと思ったら、そうでもなかった。


まあ、酷いのは酷いんですが、『感染列島』を観る前に色々とネットで調べた評判からすると、そんなに酷い映画ではないなぁと感じました。というのも、現実的に宮崎の口蹄疫と、311の地震原発事故が起きてしまって、公開当時は荒唐無稽かな〜と感じていただろう部分が、結構リアルに思えてきたからだと。また、ちゃんと作ろうとしているな〜と思わせる描写も、特に序盤に顕著で、ニワトリを殺処分する方法のバケツみたいなところに入れて凍死させるのとか、ほーと思ってしまった。


監督・脚本は瀬々敬久。ピンク映画出身でキャリアは長いみたいだけれども、あんまりこれという代表作はないみたい。この監督さんの作品を観るのは、今回がはじめてになる。


物語としては、「いくらなんでもこれはない」という部分が、中盤から大量に出てくる。特に、東南アジアのフィリピンみたいな国に(主人公たちが)行くところとか、それ必要なのかと思った。検体を手に入れるため、という理由も良く分からなければ、あれだけ感染が拡大しているのに感染ルートを特定する意味があの時点であるのかと思ったり。まあ、「あるよ!」ということにしてもいいけれど、結局は話に何の寄与もしていないんだよね。ウィルスの発見はカンニング竹山がしているし。しかも血清療法なんてちょっとどうかという治療法が唐突に出て、それが人の命を救ったりするし。そんな方法があるなら最初からやればいいやん(何百万人も死んでいるのに)。そして、感染源のオヤジは電話一本入れろと言いたい。医者にあるまじき倫理観の低さだ。


そもそも、この『感染列島』に登場するウィルスが良く分からない。どうも咳や血で感染しているらしく、ということは飛沫感染なのに日本人の3分の1が感染しているという不思議さ。空気感染なら、そもそも本当に外出禁止令が徹底されるだろうし、病院に父と娘が会いに行くという非常識さが浮き彫りになってしまう。妻夫木聡もマスクしないでほっつき歩いているということは、これが空気感染しないということを知っているのだろうね。で、どんどん隔離して病気の沈静化を図るという手法が描かれないために、犠牲者が出れば出るほどバカじゃないのか? という思いが強くなっていった。


パニックものを描くには予算も足らないわけで、こういう話を企画したのなら、ウィルスがパンデミックに到るかどうかの瀬戸際を描かないとダメじゃないかな〜と思う。これ系の話で言えば『アウトブレイク』という名作があるわけで、十分参考にできる描写があるはずなのに。あと、冒頭のニワトリがどうとかという話が、ストーリー上まったく関係しなかったのはどうかと思う。前半は規模がまだ想像の範囲内に収まっていたから上手く撮影できていたけれども、それ以降は規模がでかくなりすぎて、なにが(映画内の)リアルでなにがリアルじゃないのかの区別がつかなくなったのだろう。こういうリアリティラインを踏み外している日本映画は大量にあって、その中の一つになっているのは残念。


だいたい、あれだけ人が死んで、その後の見事に復活しました描写はありえないでしょうに。日本映画の悪いところとして、話を上手く纏めないところも目に付いた。病院のお偉いさんとか、意地悪そうな看護婦とか、どこに行ったのか。政府の対策は、カンニング竹山はどこに行ったのか。WHOはもっと大局的立場にいないとダメなのでは? いろいろと拡げた風呂敷が元に戻っていない。鳥インフルエンザを出した農家の女の子とか、最初に感染した女性とか、ポッと出てポッと消えるので、ドラマも盛り上がらないんだよね〜。人が死ぬから条件反射で泣く観客もいそうだけれど。あと、佐藤浩市の死ぬ演技はギャグかと思った。あそこはちょっと笑ってしまった(不謹慎)。


全体的な評価としては、心意気は買うけれども失敗しているという感じ。言いたいことはまだまだ山のようにあるけれども、とりあえず今日のところはこれで勘弁してやるわ! 的な気分です。最後に、なんだか、保健の授業とかで観たというツイートが観られたのだけれど、こんな映画を見せても何の役にも立たないよね〜ということから教育したほうがいいのでは、と思った。