『96時間/リベンジ』

映画館で鑑賞。


【ストーリー】
CIAの元スパイが、彼に息子を殺された男に復讐されるが、返り討ちにする。
第一章:オープニング〜イスタンブールに行くまで
第二幕:イスタンブールで母娘と会う〜娘と一緒に大使館に行く
第三幕:敵のアジトに殴り込む〜ラストまで


【見所】
イスタンブールを舞台にしたアクション。
でも、見所はそんなに……


【感想】
前作、『96時間』は
破壊神映画
の傑作だった。破壊神映画というのは、僕が考えた造語で「怒りに燃えた男がむかつくヤツを片っ端からぶっ殺す映画」という意味。古くはブルース・リーの『ドラゴン怒りの鉄拳』から、ウォンビンがむかつく韓国人を皆殺しにする『アジョシ』、イギリスのジジイを怒らせると拷問の末にブチ殺されるという『狼たちの処刑台』、タイのムエタイを世界に知らせた『マッハ!!!!!!!!』なんかもそうだったと思う。舐めたヤツは瞬間的に殺され、舐めたヤツは拷問で痛めつけられる、そういうシーンを出すことで観る者の「スカッと爽やか」な爽快感を呼び起こす映画だ。


『96時間』は、リーアム・ニーソン演じる元CIAの工作員が、誘拐された娘を助けるために文字通り「手段を選ばず」敵を皆殺しにする映画だった。車のドアで敵の頭をバンバン打ち付け、首を折り、撃ち殺し、電気で拷問し、情報を得るためには奥さんの腕を撃つという、非常時に非情になりきる男の姿が、観客の(おもに男性の)野性に訴えかけたのだと思う。で、この映画はアメリカで大ヒットし、こうして続編まで作られることになった。


で、『96時間/リベンジ』はどうかというと、イスタンブールを舞台に、前作で息子を殺された男が復讐のために主人公のミルズと母娘を攫おうとするという話。アルバニアというなんだか血の関係が濃いそうな土地で復讐を誓う厳つい男たちが、一度はミルズの誘拐に成功するのだけれど……結局、破壊神を止めることなんて人間には無理なんだなぁという結論に到る。後半以降のリーアム・ニーソンの顔は、「修羅だ!」と思わせるような鬼気迫るものがあった。こういう演技力がある俳優がアクションをする意味は、無軌道な暴力に感情移入させるためなんだなぁと思う。


でも、やはり前作と比べると『96時間/リベンジ』はパワーダウンしているところが多々ある。まず、むかつくヤツが出ない! 息子を殺された首謀者はゲスなんだけれども、ゲスが率いる犯罪集団は全員ゲスであるべきだと思うんだよね〜。なのにゲス描写があんまりないのは困った。むかつくヤツが片っ端からぶっ殺されてこその破壊神映画ではないのか? 敵がサッカー観戦しているただのアホにしか見えないのは演出不足だと思う。


さらに、リーアム・ニーソン演じるミルズの「殺しの妙技」があんまり堪能できない。そして拷問がない! むかつくヤツを拷問して口を割らせるのは超大事なのに、ミルズが敵を拷問するシーンが一つもないのは『96時間』の続編として大問題だ。これは、監督がピエール・モレルからオリヴィエ・メガトンに変わっていることが一番の原因だと思う。たぶん、ピエール・モレルは『パリより愛をこめて』という作品が大コケしたからだろうけれど、ヨーロッパコープは本当に監督の人材が少ない。


なので、物語としてはこれといった起伏もなく、破壊神ミルズが敵を殺戮するだけで終わる。映像としてはイスタンブールが舞台なので、『007 スカイフォール』みたいなアクションがあって、それもちょっとどうかと思った(偶然かもしれないけれど)。あと、『LOOPER/ルーパー』では復讐の連鎖を断ち切ることがテーマになっていたけれども、『96時間/リベンジ』では、真反対の決着の付け方をしている。たぶん敵の首謀者のオヤジをぶっ殺した後で、ミルズはアルバニアに乗り込んであそこの村の人間を皆殺しにしているよね(実際にぶっ殺すと言ってるし)。だから「3週間後」なのか……と思ったり。


というわけで、色々と不満点はあるのだけれど、じゃあ面白くないのかというと、そこそこ楽しめたかな〜というのが結論。続編だからこれくらいが丁度良いと思う。アメリカでは大ヒットしているので、たぶん3作目も作られるんじゃないかな〜