『レ・ミゼラブル』

新春1発目。映画館で鑑賞。



【ストーリー】
ヴィクトル・ユゴーの『ああ無情』のミュージカル版を映画化。パン一個を盗んで牢獄に繋がれたジャン・バルジャンの生涯と、激動のパリを描く。


【見所】
ラストの巨大なバリケードで歌われる『民衆の歌』!
ミュージカル映画っていいよね!
演者がここまで歌が上手だと、感動も倍率ドン!さらに倍。あの画面を観たら誰だって「フランス万歳!」と言いたくなるはず。


【感想】
もうね、『民衆の歌』のラストで号泣した。


僕のレ・ミゼラブルの知識は、みなもと太郎の漫画版だったと思う。小学校の教室にあって読んで、相当面白かった記憶がある。それくらいなのでフランス革命の話だったかと思っていたら全然違っていた。今回は古典的名作のミュージカル映画なんだけれども、現代の映画技術によって大迫力の大河ドラマに仕上がったと思う。あと、個人的に僕がミュージカル好きっていうのもあるかも。


監督は『英国王のスピーチ』でオスカーを受賞したトム・フーパー。でも、『英国王のスピーチ』と今回の『レ・ミゼラブル』だとスケール感が全然違うじゃねーか! と、思った。トム・フーパーってこんな大スケールの感動作も作れる監督さんだったんだねぇと素直に感心した。あと、イギリス人でイギリス色が強い作品の監督をしていたトム・フーパーが、こんなにフランス色の強い作品の監督をするのも意外だった。


無私の男、ジャン・バルジャンを演じるのはヒュー・ジャックマンで、ウルヴァリンで知られる彼の野生的な部分が「起重機のジャン」のリアリティを出していると思う。かなり歌が上手い。歌が上手いのは他の人たちにも言えることで、本当に本人が歌っているのを映画館で流せるだけの人を揃えたという印象。ジャン・バルジャンは本当に最初から最後まで良い人なんだよなぁ。まさに聖人。


登場人物はコゼット以外は本当に魅力的(コゼットは容姿は魅力的だけれど、話の中では唯一「悲惨」でない人なんだね)。『ダークナイトライジング』でセリーナ・カイルを演じていたアン・ハサウェイが、ファンティーヌを演じて悲嘆にくれるのも良かったし、エポニーヌの報われない一途さも良かった。序盤のヒロインはファンティーヌで、中盤のヒロインはエポニーヌだよねぇ。ジャヴェール警部を演じたラッセル・クロウも良かった。あのラッセル・クロウに追跡されることを考えると、やっぱりヒュー・ジャックマンという役は良く考えられた配役だと思う。


他にも、民衆蜂起を指導するアンジョルラスや、撃たれて死ぬ浮浪児のガブローシュ、そしてコメディリリーフ的に出てくるテナルディエ夫妻も印象的。サシャ・バロン・コーエンヘレナ・ボナム・カーターは本当に自分の役所が解っているというか、下品なキャラを演じられるハリウッドの俳優の頂点にいるだけあるなぁと思った。人を人と思わない超鬼畜なのに、あんまり憎めないんだよねぇ。あの二人からエポニーヌが産まれたとは到底思えない外道さがいちいち笑えた。


この物語って、ジャン・バルジャンは当時のフランス人を凝縮した象徴になっていて、彼が幸福に包まれて死ぬことはフランス市民の(将来の)自由と栄光を暗示している。レ・ミゼラブルは「銀の食器を盗んで許される」シーンと、「馬車の下敷きになった人をジャンが救う」シーンが有名だけれど、その後の民衆蜂起を描いたところのほうがさらに面白かった。ジャンは中盤以降の民衆蜂起には積極的に関わらないので、感情移入がしづらいところもあるけれど、他の面々が頑張ってそこを分担して、最後の大往生に繋げているのも良かった。


映画のラストの死んだ人たちがパリに巨大なバリケードを築いて、赤い旗を振って歌っている場面は今思い出しても号泣してしまうなぁ。苦しい生活を強いられている人々の、約束された勝利がそこにイメージされている。ここを観るだけで1800円払う価値があると思う。