『ホビット』

映画館で鑑賞。3Dの吹き替え版。


【ストーリー】
ホビット荘にやってきた魔法使いガンダルフと13人のドワーフが、ビルボ・バキンズを冒険へと誘う。


【見所】
中つ国ふたたび!
それだけでも大満足。


【感想】
前置きとして、今回3Dで鑑賞したわけだけれども、3Dを味わうような作りにはなっていないので、2Dで鑑賞したほうが面白いかもしれない。眼鏡をつけると目が疲れるし、僕は特に前のほうの椅子が好きなので。それに、吹き替え版もなかなか良かったけれども、本来の役者が歌う歌も聴きたかったなぁと。


というわけで、『指輪物語』の前日譚『ホビットの冒険』の映画化。噂では3部作ということになっているけれども、これをどうまとめるのだろうと思うほどの重厚感。おそらく、2部ではスマウグとの決戦、3部では五軍の戦いが描かれるのではないかな〜と思う。『ロード・オブ・ザ・リング』を見ていなくても楽しむことはできる。でも、見ていたほうがキャラクターをより深く知ることができて面白いはず。


感想を一言で言うと、「超美味しいお店に行って、たらふく食べて、もうお腹いっぱい! と思ったところで『じゃあ二次会に行こうか!』と言われる」という感じ。とにかく、ストーリーを映画の尺内におさめるという努力が、今回の『ホビット』の場合も、上映時間3時間の3部作なのでなされていないので、ファンなら大満足の一作に仕上がっているのは確かだと思う。オールスターキャストで、『指輪物語』にも出てくる人たちが大勢出てくる(フロドまで出てくるのにはビックリ)ので、映画を観た満足感から言えば、今年一番かもしれない。


しかも、今回は全六巻の『指輪物語』に比べると、上下巻しかない『ホビットの冒険』を3部作にするので、盛っている部分が相当あるように感じられた。それはトーリンとアゾクの因縁の辺りで、原作ではモリアのオークの首領アゾクは、トーリンの従弟のダインに殺されているけれども、そこを物語として面白くするためにアゾクとトーリンが仇敵であるように描いている。これによって物語に厚みができたと思う。


でも、やっぱり3時間は長すぎる! と思った。過去の話に戻るまでの前振り(これは『ロード・オブ・ザ・リング』を知っていればニヤリとする場面だろうけれど)も長すぎれば、ビルボがホビット荘を出るまでの話も長いし、それから3匹のトロルが出てきて、茶の魔法使いのシークエンスがあって、アゾクの集団に襲われ、割け谷からゴブリンの巣、そしてゴラムとのなぞなぞ遊び……と、本当に終わりの見えない話が続く。本当にピーター・ジャクソンはサービス精神旺盛だなぁと感心するほどだった。


長いけれども、面白さはやはり一級品だと思う。今回は『指輪物語』の前日譚なので、懐かしい面々も顔を出しているところがニヤリとさせられる。特に、割け谷でのガラドリエル、エルランド、ガンダルフ、サルマンの4人の会談は面白かった。サルマンの生真面目な感じで小言を延々と言い続ける最中に、ガラドリエルがテレパシーでガンダルフに囁くところは、ちょっとサルマン可哀想と思ったり。あと、ガンダルフガラドリエルの力関係って、ガラドリエルのほうが上なんだね〜。


あと、トーリンを筆頭にドワーフたちのキャラも面白かった。特にトーリンがカッコイイ。アゾクとの決戦に挑むために立ち上がるトーリンの勇姿には痺れた。それと今回の『ホビット』には敵クリーチャーにも明確な性格付けがなされていて、3匹のトロルやアゾク、ゴブリン王などのキャラが良かった。穢れの王アゾクとその一団は、『ロード・オブ・ザ・リング』でザコ中のザコだったオークとは思えないマッチョさで、サウロンが復活してからの弱体化が気になるほど。ゴラムはいつものゴラムだった。


あと、グワイヒア(大鷲)は反則すぎる。いつも思うけれど、全てをぶち壊す存在だよね。


観るべき映画だと思うけれども、正直なところ、物語的なダイナミズムはあまり感じられなかった。もっと面白く描くこともできただろうし、要らないエピソードもたくさんあったような気がする(茶のラダカストの辺りとか)。その代わり、映像のダイナミズムはものすごいので、全体の釣り合いがとれていると思う。2作目、3作目もこのクオリティが保てるのなら、成功は間違いないだろう。ドラゴンのスマウグもちょこっとしか出ていないし、死人使いとの戦いも控えているし、見所的にはこれ以上のものが控えているわけで。