『アルゴ』

映画館で鑑賞。


【ストーリー】
イラン革命で窮地に陥ったアメリカの大使館員6人を、CIAのエージェントがハリウッド映画『アルゴ』の撮影クルーと偽って救出する。


【見所】
監督主演のベン・アフレックは、イーストウッドの後釜を狙う男と言われてきたけれども、その世評に違わない名作だと思う。とにかく緊張感が半端ない。そして、エンドクレジットで当時の写真や実在の人物の写真が出てくるけれども、このソックリ度合いにも驚いた。カーター元大統領も、劇中ではボロカスな描かれようだったのに、よくエンドクレジットでコメントを寄せてくれたなぁと。


【感想】
面白かった!


正直、ベン・アフレック監督主演ということで、舐めていた部分があったけれども、こんなに面白くてハラハラする映画を撮れる男になったのか〜と嬉しく思った。なんというか、俳優出身の映画監督としては、世界でも屈指な逸材になっている。


題材は、イラン革命で米国大使館が占拠され、カナダ大使の家に逃げ込んだ大使館員を救出するために、架空のハリウッド映画『アルゴ』をでっちあげるCIAエージェントの奮闘が描かれる。今の世界情勢も、イランとは緊迫した状況が続いているのに、よくこんなにイランの街並みを再現できたものだ……と感心した。政治的にフェアだと思ったのは、冒頭にイラン革命がなぜ起きたのかが説明されているところ。ここで、欧米と傀儡であるパーレビ国王の関係、そして貧困に喘ぐイラン人という図式が「自業自得」な目線を与えている。


でも、やっぱり異常なものは異常なわけで、子供たちにシュレッダーのジグソーパズルをさせている場面とか、コントロールが効かない群衆、髭面のイラン人の怖い眼差しなど、緊張感が果てしなく続く。派手なシーンは一つもないけれども、この緊張感という部分だけで、この映画の成功は約束されたようなものだった。


あと、B級SF映画『アルゴ』を作るハリウッドの面々の底抜けさ。マスコミへの記者会見で脚本を読み上げる役者たちの、思いっきりスターウォーズをパクったビジュアルには頭が蕩けそうな勢いだった。ここの部分で息抜きがあるから、イランに潜入した後の緊張感あるシーンの釣瓶打ちも耐えられたのかなと。あと、CIAの本部のほうでも、エージェントをフォローしようと全力を尽くす様が描かれていて、そこにも感情移入してしまった。


一番の問題点である、「行きは1人なのに、帰りは7人問題」をどうクリアするのかについては、ハッタリで上手く擦り抜けるというのは、史実なのかもしれないけれど、他にもう少し方法があったのでは……と思った。でも、飛行機が飛び立つまでは、「もうダメ! 早く飛んでくれ!」と観ていて思うから、あれくらいが丁度良いのかもしれない。あと、ベン・アフレックが僕の友達に似ていたのも、高評価なところだったりする。眼差しがね、似てるのよ。