『ダークナイト・ライジング』

映画館で鑑賞。

【ストーリー】
バットマンがいなくなったゴッサムに、傭兵ベインが襲来する。


【見所】
封鎖されたゴッサムで起きる警官隊とベイン軍団の激突。あと、アン・ハサウェイの美貌。アルフレッドの演技。
一方、現代がライジズであるように、あの穴から登るシーンを見せ場にしようとするノーランのセンスには疑問符が……


【感想】
評価に困る……


ノーラン版バットマン三部作の最後の作品は、全編が死の臭いが濃厚な物語になっていた。究極悪として出てきて、バットマンとの対比となるべきジョーカーが、ヒース・レジャーのあの不慮の死によって文字通り「いないもの」として扱われる以上、バットマンもまた死ぬことが運命づけられている……のは当然なのかもしれない。


今回の敵役はキャットウーマンとベイン(と、もう一人)で、ヒース・レジャーのジョーカーという強烈な存在感のあととあって、どうかな〜と思う部分が鑑賞前にはあったけれども、結果的にはかなり力強いキャラクターになっていたと思う。とにかく今回は人がばんばん死にまくるので、ジョーカーとは真逆のキャラ設定が成功した……と思う。


ベイン役のトム・ハーディは、知的な筋肉ダルマというベインの役どころをかなり熱演していたと思う。超人ハルク並みの巨漢に描かれるベインを、普通の人間サイズにしているけれども、壁を穿つパンチ力の持ち主だったり、歩く時にガチャンガチャン重い音がして、結構演出に気を配っているなぁと感じられた。リアル路線のノーラン版では、マスクの設定とかはちょっと無理があるような気がしたけれどね。あと、黒幕が出てきてからの小物化はちょっとヒドいものがあった。


キャットウーマンは最高!アン・ハサウェイってあんなに綺麗だったのか!とビックリしたし、あの衣装もグッときた。セリーナ・カイルで押し通しているところは評価が別れるところか。あと、セリーナの相棒のレズっぽい女の子とか、いい感じだったと思う。彼女が目的としている過去のデータを消すプログラムって、そんなものが必要なの?と思ったり、狂言回し的な役としてはちょっとストーリーがこなれていないところも感じたけれど、唇に免じて許す勢いだ。


物語ではジョーカーがいないものとして扱われているけれども、もしヒース・レジャーが生きていたなら、このストーリーにジョーカーどう絡んできたのかが気になる。というか、影の軍団ってジョーカーに比べると、まだ清く正しく悪いことをしている感じがあって、どうにも敵としては見劣りするんだなぁ。あと、クレインに裁判官をやらせるくらいなら、デントが刑務所の奥で実は生きていて……という展開にしたほうが良かったのではないか。クレインも判決を出すだけで物語にはカメオ出演的扱いだし。


三部作の最後を飾る作品としては申し分ない作品だったと思うけれど、やはりもうちょっと派手な見せ場も欲しかった。中盤の破産に至る流れのあたりとか、よくわからないまま進むし。あれ、ウェインを破産させたのはタリアに権力を移譲させるためだったにしても、あとの展開でベイン軍団が地下から中性子爆弾をゲットするわけだから、別に必要のない展開だったよね。


逆に、バットマンが大活躍!みたいな見せ場も前作と比べてないわけなので、この死の臭いが濃厚な話のテンションの置き場所に迷った。前作と比べると、ジョーカーって悪役として本当に秀逸なんだなだということが解る。ベインは殴り合いでもバットマンを圧倒しちゃうけれど、ジョーカーは殴り合いでは歯が立たないものの、でかいことをやったわけだから。


個人的には『ダークナイト』で人間性を見せた囚人たちが、今作では銃を持って無法者になっているのが気になった。そこはもっと、デント法による歪みみたいな問題を描くべきだったのではないか。似たような描きこみ不足を感じるところは多々あった。ゴッサムという街を護るのは誰なのかという問題にも切り込んでほしかった。何というか、住民不在の物語なんだよね。


なんて、不満はタラタラ書けるけれども、面白かったと思うよ!僕はバットマンが大好きなので、バットマン映画というだけで大満足です!記念碑的作品であることは確かだし、観て損はない映画であることも確か。冒頭の飛行機のシーンとか最高だったし。ぜひ、映画館で観るべき映画だと思う。