『ボックス!』

テレビで鑑賞。


ボックス! スタンダード・エディション [DVD]

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【ストーリー】
チンピラとガリ勉がボクシングで強くなる。
第一幕:オープニング〜鏑矢が負ける
第二幕:鏑矢が部活を辞める〜鏑矢が木樽に負ける
第三幕:二人でロードワーク〜ラストまで


【見所】
市原隼人高良健吾のボクシング。


【感想】
ボクシングはそこそこ良かった。主演の二人は何ヶ月か練習しただけあって、パンチの打ち方や身のこなしが様になっている。市原隼人の亀田っぽいスタイルもよく表現できていた。序盤の攻撃を知らない先輩と、インターハイでのガードを知らない鏑矢の対比は良かった。主演二人の魅力で、青春映画としての最低レベルは超えているし、後味も悪くはないが……


でも、褒められるのはそれくらいで、物語としては「端折りすぎ」という印象が否めなかった。何というか、ボクシングという成長を描くのに適した題材であるのに、これほど葛藤を描かない話も珍しいと思った。ツルツル話が進んで、鏑矢が試合に負けて、マネージャーが死んで、鏑矢がボクシング部に復帰して……と、話をなぞるだけの展開が続く。


ボクシング映画としてどうかと思うのは、木樽が最初からボクシングがそこそこできそうなところ。もっと勉強しかできないガリ勉なのだから、スタートラインは縄跳びも無様なレベルじゃないと、鏑矢との対比にも努力で強くなるという説得力にも欠けると思うんだけれど、特に血反吐を吐くという描写もなく強くなっちゃうんだよねぇ。あと、ボクシングのハウツーものとしての描写も、ボクシングで勝利するために工夫する描写も足らないと思う。「頭が7割」と言う割には。


ちょっと疑問に思うのは、コーチの指導方針。この人、ガードばかりで攻撃を教えない人という設定だったのに、なぜかいつのまにか心変わりして攻撃も教えている。ということは、あのキャプテンに嫌がらせをしていたのだろうか?良く分からないといえば、暴力反対的な立場の顧問の先生も、いつのまにかボクシング部に染まっているし。


こういうのって、原作を映画化するときに、原作のエッセンスを理解することなく映画用にまとめているからだと思う。もっと脚本化するときには大胆に脚色するべきで、それができないと中途半端になる。こんな長いスパンの物語にする必要があったのかという気もするし、そのために人物の掘り下げが不十分なまま終わる。稲村ももうちょっと人間として描けたはずだし。


あと、ラストの蕪木vs稲村の戦いは、なんでサウスポーにスイッチしたら稲村を圧倒するかの理屈が欲しかった。木樽との練習でサウスポーになっていたからと言っても、それが強さにつながるわけでもないし。もっと、それが稲村の致命的な弱点に繋がる描写が欲しかったところ。ボクシング映画はたくさんあるのだから、それを踏まえた物語になっていれば……と思う。