『インセプション』

テレビで鑑賞。今回で二度目。


【ストーリー】
人の夢に潜る産業スパイが大仕事に挑む。
第一幕:オープニング〜サイトーのヘリに降りるまで
第二幕:パリで父親に合う〜ロバートが撃たれるまで
第三幕:第四層に落ちる〜ラストまで


【見所】
何でもありでリアルな夢世界。モルの亡霊っぽさ。


【感想】
映画館で観たときは、夢の世界のあんなこんなに圧倒されたけれども、二度目でテレビで鑑賞となると、いろいろと冷静な視点で見ることが出来る。


一流の産業スパイなのに、あまり手際が良くないなぁという世評はそうなんだけれど、ここまで特殊な世界だと何をするにも大変なんだろうと解釈している。ここまで何層にも別れた話をよくまとめたなと、クリストファー・ノーランストーリーテリングが冴えまくっていて、そこをまず評価したいと思う。普通、ここまで複雑な話を作ると破綻しちゃうよね。


夢の世界のルール説明をじっくりするところが面白く、第一階層から虚無まで潜る後半は、前半の圧倒的不思議世界のビジュアルの余韻で進んでいると思う。これ、異なる四つの世界を行き来するほうは、そこまで深くは描いていないのは正解だった。この辺りの手順の踏み方も洗練されていて、最初に説明なしの夢世界、次に説明ありの夢世界を提示して、同時に仲間集めや準備をちゃんと描いている。


俳優陣もとても良かったディカプリオは心に闇を抱えたキャラクターが板に付いている感じ。でも、この映画で光っていたのはイームズ役のトム・ハーディと、アーサー役のレヴィット、そしてモル役のマリオン・コティヤールだった。イームズとアーサーの底の見えない感じや、亡霊になってしまったモルの視線はこの映画の魅力に直結していると思う。渡辺謙もちゃんと美味しい役どころだった。


エレン・ペイジは僕のイメージだと『スーパー!』のプッツン女なんだけれど、この映画だと知的な少女という感じで同一人物とは思えなかった。というよりも蒼井優っぽい。アリアドネはコブに惹かれているのだから、ラストに顔を見せても良かったのにね。


どうかなーと思うのは、さすがにここまで複雑な話だと設定のミスが出てきているという点。特に、第一階層で車ごと水に落ちているのに、なんで「キック」が効いていないんだよと思ったり(僕の考え違いかな?)。あれ、第一階層は薬が効き続けている一週間いる予定だから、あのあとも銃撃戦をやったのだろうか?あの辺りの設定はよく分からないところが多い。ロバートがインセプションされたら丸く収まるのか。


あと、時間の流れが違うという設定はあるのだけれど、上の階層の緊迫した状況と、下の階層のメロドラマ的展開が同時に進むのは話の見せ方としてはどうかなと。特に、虚無の世界の崩壊しかけている世界で、あんなにのんびり歩いていていいのかなと。ラストのコマは、ああいう観客に引っかかりを残す終わり方はよくあるので、別に深く考えることはなかった。『ブレードランナー』みたいな感じというか。


先週の『宇宙戦争』と比べると、ビジュアルの演出力はスピルバーグに及ばないものの、それでも十分楽しめる内容になっている。テレビで鑑賞しても満足度は高いが、これは映画館で見てこそ映える映画だと思う。