『ミケランジェロの贋作』

名画座で鑑賞。


【ストーリー】
ユダヤ人の画商とナチの親衛隊になった画商の幼馴染みが、秘蔵のミケランジェロの絵を巡って虚実入り乱れた駆け引きを行う。
第一幕:戦前
第二幕:戦中
第三幕:戦後


【見所】
本物のミケランジェロの絵がどこにあるのかという本題と、ユダヤ人の画商の正体がいつばれるのかという緊張感が絶妙に絡み合っているところ。


【感想】
同時上映の『戦火の馬』のほうに興味があったけれども、実際に鑑賞してみるとこちらのほうが面白かった。


ナチスによる美術品略奪の物語なんだけれど、そこに「失われたミケランジェロの絵」が登場して、「ドイツとイタリアの関係を保つために絵が必要」というナチス側の事情が語られることで、実際は二人の人物の骨肉の争いに世界史的なスケール感が生まれていると思う。ホロコーストも絡むために幾らでも暗い話にできるだろうが、そこは踏み止まって、むしろ軽妙な語り口をしているところも好感が持てた。


失われたミケランジェロの絵がナチスに奪われることを阻止するために、ヴィクトルの父親が贋作を作り出すところから、ヴィクトルとルディが入れ替わるところでグッと物語の面白みが出てきたと思う。ルディのバカっぽいところや、収容所の所長の間抜けっぷりが楽しい。入れ替わりが一段落したところで、ひょんなところからその話が蒸し返されるというのも意外性があって笑ってしまった。この映画はナチスの軍服映画でもあって、そういう意味では『イングロリアス・バスターズ』とは真逆の方向性があると思う。この二つの作品を見比べてみるのも楽しいかも。


主演は誰も良い演技をしているけれども、脇役の風貌もなかなか魅せるものがあった。僕はイタリアとドイツの高官が話し合う場面の、イタリア側の高官がとても印象に残った。終わりかたもルディが制裁を受けるのではなく、ヴィクトルがミケランジェロの絵を手に入れて立ち去るところでエンドロールに入るのも良かった。この映画は全体的に音楽がとても良くて、それが物語の洒脱な雰囲気を強化していると思う。


期待していなかった映画がとても良いと、素直な驚きが体験できる。それが一番素晴らしいところだったりする。