『宇宙戦争』

テレビで鑑賞。


宇宙戦争 スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

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【ストーリー】
突然現れた宇宙人から逃げ惑う。
第一幕:オープニング〜家を出る準備をする
第二幕:車を出す〜ロビーと別れる
第三幕:オグルビーの家に入る〜ラストまで


【見所】
ザ・地獄絵図。
個人的には火炎列車と降り注ぐ洋服の場面は身震いした。こんなの見たことがない!と本気で思った。


【感想】
今回が初見。観る前は「大阪の人がトライポッドをやっつけた」みたいなネタを楽しみにしていたのだけれど、実際に観てみるとトンデモナイ。ただひたすら唖然としてしまった……


スピルバーグは「日常の裏でとんでもないことが進行している」という演出が異常に上手い人だけれど、それは映画技術の限界から仕方なくやっているだけで、本当は強烈なビジュアルイメージがあってこその「工夫」だったというのが解る作品。スピルバーグの想像力に映画技術が追いつくと、もはや地獄絵図であっても表現できる。そして見ることができるのか。


とにかくスピルバーグ先生が「俺が本当のディザスタームービーを見せてやる!」という気概を、正面から観てしまうと、あまりのカタストロフに唖然とするか死ぬ、ということが良く解った。特に序盤からオグルビーの家に籠るまでの、息を吐かせぬ地獄絵図はとにかく凄かった。崩壊する街、消失する人、聳え立つトライポット、逃げ惑う人々、奪われる車、暴走する火炎列車、森に降り注ぐ洋服、絶望的な戦場。あまりに圧倒的すぎて、これを映画館で見るとちょっとショックを受けてしまうかもしれない。


色々と設定がおかしいところもある。それを、スピルバーグ演出の真髄で「持っていく」ことに成功している。ダコタ・ファニングが大人っぽいかと思えば、パニックを起こして叫びまくるとか、もうちょっと抑揚がほしいところもあったけれど。トム・クルーズは普通のエイリアン侵略ものだと真っ先に死んでしまう役所だよね。常に最前線で地獄を目撃する役回り。実際、ああいう事態になったらああなるよね。


トムの父親像と子供たちの無軌道さは、『未知との遭遇』の裏返しのようなものに感じられた。『未知との遭遇』は宇宙人に向かう人で、こっちは逃げる人だけれど、父親になりきれない男と、欲望をセーブできない子供という構図は、過去作でも何度も描かれているところだ。『未知との遭遇』では主人公は成長しないけれど、こちらは別れを経験し、手を汚すことで成長する姿も描かれている。この辺りはスピルバーグの人間的な成長が、作品に反映されているのかなと。


マイケル・ベイローランド・エメリッヒのディザスターも凄いけれども、それとは次元の違う「あまりに恐ろしいものを観てしまった」という感じでお腹いっぱい。原作通りのオチで終わるのがどうかという人もいるけれど、僕はもう「あれくらいで勘弁してやるわ」という気分になったので、あれでいいと思う。インディペンデンス・デイみたいな話でもないしね。宇宙人がはるか昔にトライポッドを埋めたにしては、技術の進歩的なところがあまり感じられないとか、細菌くらい対策してるだろとかあるけれど、原作通りだし。


物語的なことを言えば……あんなことが起きると、僕なら真っ先に灰になるか、血を吸われる自信があります! ということで。あと、たぶん子供も見捨てて逃げまくったあげくに死ぬと思う。