『アレックス・ライダー』

スカパーで鑑賞。


アレックスライダー [DVD]

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【ストーリー】
少年スパイのアレックスが、実業家セイルの陰謀を暴く。
第一幕:オープニング〜写真ボックスに入るまで
第二幕:秘密基地で叔父の正体を知る〜ヘリでロンドンに行くまで
第三幕:パラシュートで降下する〜ラストまで


【見所】
カリカチュアされた悪役たち。ミッキー・ローク不良中年っぽさ。


【感想】
原作はイギリスのジュブナイル小説で、ハリーポッターの007版といった感じの作品だったと思う。荒木飛呂彦がイラストを描いていたような気がするし、何作もシリーズが続いていたと思う。物語的には「何でもできる少年がスパイになってさらに手が付けられなくなる」というもの。この辺りのなんでもできる部分が、イギリスっぽいところなのかなと思う。


というわけで、主役のアレックス・ライダーは最初から恵まれすぎているためか、あまり感情移入できるキャラクターではなかった。なに不自由ない中流階級(か、こいつも上流階級かも)に属していて、上流階級の女の子と仲が良くて、下流階級の悪役と戦うという構造は、ジュブナイル的に正しいのか?と思ってしまった。中学生はこれを観てアコガレを抱くのかもしれないけれど。


ミッキー・ローク扮する悪の実業家セイルの動機は「子供の頃、今のイギリス首相にいじめられたから復讐する」というもので、手段はともかく目的としては十分分かるものだっただけに、それをアレックスが「いじめられた人間がお前のように心が歪むわけではない」と言う場面で、この映画の主張って結局は「下郎は身の程をわきまえろ」というものなのかなと思った。


アレックスは学校でいじめられているような、「冴えない男子」のほうが物語に深みが出たはず。逆境を乗り越えるためのアレックスとセイルの対比の物語にすれば、見終わったときのモヤモヤ感はなかったのに、アレックスがスーパーマンなために倫理的な脇の甘さが物語の質の低さを露呈させてしまったと思う。シナリオも全然ダメ。あのセイルの秘書が自宅を襲撃する場面で、なんで叔母を殺さないのかとか、学習装置にウイルスを仕込むというヘンテコな計画もアレだし、首相の指紋認証でしか装置が起動しないというのもバカな話だった。そしてなにより、最後の対決が横槍で決着するのもどうかと思う。


でも、ジュブナイル的な荒唐無稽さはイギリスも日本もあまり違いがないのかもしれない。子供が観る分には、ユアン・マクレガーも出ているし、解りやすい悪役演技もあるから十分かも。でも、映画の価値観には賛同しかねる。ちゃんと「恵まれない人間が努力して栄達した」ことに対する評価をした上で、善悪の是非を問うような作品にすれば真にジュブナイル的なものになったと思う。