『ジャック・ソード 選ばれし勇者』

スカパーで鑑賞。


ジャック・ソード 選ばれし勇者 [DVD]

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【ストーリー】
伯爵に父を殺された少年ジャックは、成長して一揆を起こす。
第一幕:オープニング〜ジャックが教会に拾われるまで
第二幕:ジャックが青年になる〜伯爵の城が炎上するまで
第三幕:裁判〜ラストまで
この物語は第一幕が全てで、第二幕からはほとんどパセリのようなもの。


【見所】
意味もなく脱ぐ超美少年の裸。

この子が脱ぎまくるんですわ。いや、マジでフランス人変態やわぁと思った。


【感想】
題名から中世ファンタジー映画かなぁと思ったら、意外にもナポレオン戦争後の王政復古の時代の物語で、しかも題材が百姓一揆だったという変わり種。近代のフランスが舞台というと最近観た映画では『花咲ける騎士道』などがそうかな、と思うけれど、舞台が田舎なので中世的な雰囲気が色濃いという特色もある。フランス映画としてはかなりの大金が掛かった映画らしく、たしかに華やかなシーンや、城の炎上など、見所は沢山あるけれど……


この映画の見所はやっぱり、ジャックの少年時代にあって、青年時代のギャスパー・ウリエルなんか全然問題にならない魅力をはなっている。これは監督ローラン・ブトナの性的嗜好があるんじゃないかと勘ぐってしまうほど、超美少年のレオ・ルグランが脱ぎまくる。この映画は全体的に子役がとても素晴らしくて、前半はディケンズみたいな浮浪孤児もの映画としてかなり良かった。ジャックの身寄りがどんどんいなくなって、もう死ぬしかないというところで教会に拾われて……という王道展開は、監督のテンションの上がり具合が手に取るように感じられた。たぶん、神父が監督の分身で、身寄りのない裸の少年を拾ってペロペロしたいという願望があるのだと思う。


一方、ジャックが青年になってからはグダグダ映画になってしまう。ギャスパー・ウリエルはかなりの美青年だし、脇を固める俳優陣も雰囲気があってとても良いのに、なんでここまでグダグダな話になってしまうのだろうと唖然とした。悪役の伯爵が顔が怖いだけでそんなに圧政を敷いているようには見えないとか、ジャックがいつのまにかカリスマ指導者になっているとか、そのジャックを伯爵が敵視する理由が分からないとか、神父のライバル的なおっさんがいつのまにかいなくなるとか、騎士(これがなんとチェッキー・カリョが演じている)と幼馴染みの女の子がなんの役にも立っていないとか、伯爵の娘がジャックを狙撃する場面はあれ一体何だったの? とか、いろいろ突っ込めばきりがない。でも、伯爵の娘が良いキャラクターだからかろうじて観ていられるのだと思う。


伯爵の娘はジャックに気があるのだけれど、ジャックは幼馴染みと相思相愛で、結局叶わぬ恋に終わってしまう役柄なんだけれど、この「逆身分違いの恋」という展開はなかなか面白かった。伯爵の娘が男装の麗人で超美人というのもポイントが高いし、ツンデレで、ちょっとどうかというくらいデレるところも良かった。ただ、ジャックの幼馴染みの女性が(こちらも超美人だけれど)ただ見守るだけの役なので、観客は「ジャック、伯爵の娘とやっちゃえよ!」と思うのにやらないのは残念だった。これ、途中までは絶対にハーレムエンドなんだろうなぁと思っていたので。それと、やはりジャックの人物造形が甘くて、なぜカリスマ性を持っているのか、なぜモテモテなのか、という部分が非常に甘い。ギャスパー・ウリエルは美男だけれど、神父に育てられたと言っても、ただの庶民なわけだし。


ただ、こういう脚本のグダグダさはフランス映画的にはありがちな部分なので、許せるか許せないかで言うと許せるほうかな。ヨーロッパコープ的な感じ、と割り切ればいいわけだし、歴史ものとしてはそこまで悪くもないかなという評価に落ち着く。後半はもっと『マスク・オブ・ゾロ』みたいな単純な人間関係で良かったような気がする。この映画は前半の超美少年を鑑賞する以外の価値があんまりないけれど、前半部分は突出して良いので、前半部だけ鑑賞するのが一番オススメできる映画の見方だと思う。


あと、チェッキー・カリョが出てるんだよね。騎士役で。マジ気付かなかった。