『ファミリー・ツリー』

映画館で鑑賞。直前まで『キラー・エリート』とどっちを観るか迷ったけれど、結果的に良い選択をしたと思う。



【ストーリー】
妻が死にかけていて、しかも彼女の不倫まで発覚したダメな亭主が、家族の絆を取り戻す。
第一幕:オープニング〜妻の不倫が発覚するまで
第二幕:スピアーの名前を聞き出す〜ハワイ島から帰るまで
第三幕:一族会議〜ラストまで


【見所】
ジョージ・クルーニーってこんなに演技が上手かったのか!と思うほどの名演。最初は崩壊一歩手前だった家族がどんどん愛おしくなってくる。さらにシド!そしてハワイの自然!!


【感想】
そうだ、ハワイに行こう。


監督は『サイドウェイ』で一世を風靡したアレキサンダー・ペイン。主演はジョージ・クルーニー。各映画賞を総なめにした映画ということで、それもアレキサンダー・ペインの久しぶりの監督作品ということで、ちょっと身構えて観たけれども、これは非常に良い作品だった。


妻がスポーツ中の事故で昏睡状態になり、しかもすでに心は離れ離れになっていて、どうやら不倫もしていたらしい。主人公の亭主は仕事一筋で、一族の土地を売る案件に忙しく、降って湧いたような不幸に対応できず、しかも娘たちをどう扱っていいのか分からない……というかなり深刻な内容が、ハワイが舞台で展開していくというところがポイント。


ジョージ・クルーニーの最初の独白にもあるように、ハワイの能天気な風土が、思いっきり深刻な問題を優しく受け止めてくれるところが、この作品の魅力に繋がっていると思う。緊張感が漂う場面でも陽気なハワイアンが流れて、主人公の苦悩から一線を引いて観るような仕掛けになっている。主人公はハワイの楽園的な性格を否定するけれども、最後にはハワイの人間だということを自覚し、家族の絆も取り戻す。観客はそれを鑑賞して「ほろり」としてしまう。ほろり映画としては最強かもしれない。


主人公たち家族が全員成長するところも良かった。特に、長女の友人であるシドが最高だった。最初は、「え?なんでこんな奴が一緒に同行するの?」と思うほど、若いときのジャック・ブラックみたいな能天気なバカなんだけれど、主人公たちと行動を共にするに従って、びっくりするほどの男前になる。たぶん、シドって「ハワイ」のイメージを抱えた観客である僕たちそのものの役だと思う。


あと、水着のお姉ちゃんが可愛いとか、水着の幼女が可愛いとか、いろいろと見所がある。子役は微妙な可愛くない容姿で、それなのにキチンと演技することで可愛くなってくるのは凄いと思った。役者は全員素晴らしい仕事をしている。妻の両親が最後のお別れをするシーンも感動的だった。


ジャンル的にはコメディ・ドラマということになっているけれど、コメディの部分は笑わせようとして笑わせる部分はちょっとしかない。妻の母親が「エリザベス女王のお見舞いに……」と言うところくらいか。それよりもハワイ的な、ハワイに行ったらみんな笑顔になるよね的な雰囲気が濃厚だと思う。序盤で主人公の手料理を食べなかった娘が、ラストで一緒のソファーでテレビを見ながら食べ物を食べるという終わり方も良い。


見終わったあとに強い満足感が残る作品だったと思う。僕はあんまりハワイのハワイ的なものが好きではないけれども、それでも猛烈に行きたくなったし。