『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』

名画座の同時上映。


【ストーリー】
イーサンが核戦争の陰謀を阻止する。
第一幕:オープニング〜任務を聴くまで
第二幕:クレムリン潜入〜核ミサイル発射まで
第三幕:テレビ局に突入〜ラストまで


【見所】
今回のミッション・インポッシブルは、かなりギャグ的な演出が盛り込まれた作品になっている。クレムリン大爆破とドバイの超高層ホテルのシーンは良かった。


【感想】
僕の知り合いは「大駄作」と言ってたけれど……


監督のブラッド・バードは『Mr.インクレディブル』などで知られる人で、本来はアニメーション方面の人だったようで、確かにピクサー的な演出やキャラクターが出ている。アニメーション方面の監督が実写映画化を任されるのは、最近でも『ジョン・カーター』のような例があって、今のところはあまり上手く行っていないような気がする。実写とアニメとでは勝手が違うのか、ジョン・ラセターが製作総指揮の座についていないと威力半減なのか。


物語的にはイーサンたちスパイが、国際的な大陰謀を阻止するといういつもの作りになっている。自身にあらぬ疑いを掛けられて、孤立無縁の状況になるのも、超ハイテク装置を使って潜入するのも同じ。ただ、前作までと比べると深刻さよりも軽妙さが重視されている異質なシリーズだと思う。


僕はこの軽さは好ましいように思えた。ドバイのホテルをクライミングする場面の、投げ捨てた手袋が窓に引っ付いているところとか、スクリーンに顔面が大写しになるところとか、セリフの数々(「天王星」と「アナル」を掛けるところは、R・ケリーの歌から引用したのかなと思ったり)、インドのアホな大富豪など笑どころのツボは外していないように思えた。劇場でもところどころ笑い声が漏れてたし。


物語的に最大の問題点は、悪役が地味だという点。狂気の核終末論者カート・ヘンドリクスを演じたミカエル・ニクヴィストも、その片腕も地味な印象しか残らないのは残念だった。前作の敵がフィリップ・シーモア・ホフマンだったのと比較しても後退だし、悪役そのものの陰謀を企む理屈は相当面白いだけに、もっとビッグネームの役者を配するべきだったのではないかと思う。もう一人の悪役、サビーヌ・モローは良かったけれど、彼女もドバイであっさり死ぬし。


ヘンドリクスの「核戦争が起きても人類は滅びないだろうし、起きてしまえば世界中が広島や長崎のようになって、真に平和を意識するようになる(だから核戦争を起こす)」という理屈はかなり面白かった。佐々木俊尚さんの『「当事者」の時代』を悪引用したような理屈で、311以降の日本でこの映画を観ると、その理屈も腑に落ちやすいと思う。


ストーリーはスパイ大作戦なのでテンポ良く進むけれど、やはり少し大味なところが目立つかなと思う。クレムリン爆破以上の映画ならではのシーンもないし、核ミサイルが海に落ちて……って、アメリカの防衛システム的にはICBMが発射された時点で、報復ミサイルが発射されているはずだよね。また、4作目になってアクションのアイデアもかなり枯渇してきているような気がする。BMWとのタイアップはそんなに気にならなかったけれど、最後の立体駐車場からの落下は、いくらなんでもやりすぎでは?


面白い部分は面白く、どうかな〜と思うところはどうかな〜と思う、ハッキリとした映画だと思う。