『リアル・スティール』

名画座で鑑賞。


【ストーリー】
負け犬の元ボクサーが、ロボットボクシングで栄光を掴む。
第一幕:オープニング〜マックスが来るところまで
第二幕:ノイジーボーイの起動〜マックスと別れるところまで
第三幕:屋上でのキス〜ラストまで


【見所】
負け犬たちのワンスアゲイン映画として、ツボを押さえた展開。「ロボットボクシング」がちゃんとスポーツエンターテイメントとして機能している描写。


【感想】
去年、映画館で予告編を見たときは、だいたいどんな内容かが想像できて「見に行かなくていいかな?」と思ったけれど、これが意外にも感動できるという話だったので気になっていた作品。結論から言うと非常に満足できた。


元ボクサーでロボットボクシングのセコンドをしている主人公が、離婚した妻が死んだことから息子と共同生活することになり、偶然掘り起こした旧型ロボットを使ってのし上がっていく……という内容は、『ロッキー』などの「負け犬が奮起する話」をかなり研究したものになっている。


ロボットボクシングという、どうなんだろうという題材も、CGで迫力あるものになっていて、劇中で違和感を感じることはあまりなかった。ロボットに関してはATOMが異常に打たれ強い理由が、「スパーリングロボットだから」以上の理屈がなかったことくらいか。でも、この辺りは「細かいこと」として相当割り切っている描写だった。セコンドが修理するのもコードを付け替える程度だし。


ATOMが勝ち出してからの「上手く行ってる感」が良く描けている。子役の少年の演技がかなり上手くて、ATOMと一緒に踊るシーンとかはスポーツものの面白さに溢れていた。この映画の魅力のほとんどは、子役のダコタ・ゴヨに負うところが大きいと思う。周囲を巻き込んでビッグマッチを成立させるところなどは『紅の豚』のフィオっぽくて面白かった。


主眼は主人公である父親が栄光を取り戻して、真の父親になるところにあると思うけれど、これがあまり成功しているとは思えなかった。ヒュー・ジャックマンの父親は、ATOMを連れて帰るまで最低の人格で、ロボットのセコンドとしても適格ではなさそうなので、映画の尺内で一つ一つ成長する様を描くのはかなり難しそうだった。ロボットのセコンドは少年のほうがどう見ても適格だろ、と思ってしまうほど。でも、所々のシーンは光っていて、最後のシャドーボクシングで輝くので帳尻は揃った感がある。


あと、ATOM自体の設定ももう少し語るべきだと思う。特に、ゼウスチームがなぜあれほどATOMを警戒していたのか、その理由がイマイチ良く分からないのは残念だった。タグ・マシドがATOMの秘密(異常に打たれ強いとか、人の言葉に反応するとか)に絡んでいるのかな、と思ったけれど、結局は無口で不機嫌な東洋人のままだったし。この辺りも練り込み不足なところがあると思った。


でも、この2点を乗り越えれば、エンターテイメント映画としては文句ない出来だと思う。嫌な奴には報いがあるし、主人公が父親として目覚める場面で半殺しの目にあう展開は上手いと思った。ロボットボクシングの舞台がどんどん訳の分からない場所になっていって、最後は動物園で戦うというのも面白いし、熱狂する観客たちを画面に映しているのでスポーツ的な醍醐味もあった。肩の凝らない映画を見たいときにオススメ。