『相棒 劇場版2』

テレビで鑑賞。


【ストーリー】
杉下右京と神戸尊が警視庁人質籠城事件の謎を解決する。
第一幕:オープニング〜籠城事件の解決まで
第二幕:記者会見〜朝比奈圭子の真相の告白まで
第三幕:盗聴器発見〜ラストまで
この映画の弱点は、誰が観ても第二幕にあると思う。


【見所】
第一幕の警視庁占拠事件の顛末は面白かった。


【感想】
警視庁占拠事件が起きた冒頭はテンポ良く展開していくので、映画的なスケールのある話だと思ったものの、そこからスケールがテレビで観るには丁度良いレベルに落ちてしまう。逆に言えば、警視庁占拠事件の描写は本当に素晴らしくて、緊迫した状況と謎を呼ぶ展開でグッと観客の心を掴むことに成功している。


で、そこから占拠犯人の動機と7年前の事件の真相を、杉下右京が調査する展開になるのだけれど、ここの辺りの「なぜ調査をするのか」という強い理由が明確に描かれていないために、観客の興味を持続させることに失敗していると思う。杉下右京のキャラクターがそういう人だ、というのは分かっているので、ギリギリ呑み込めるかなという程度。


実際のところ、映画の第二幕は『相棒』の大きなアドバンテージである「日本映画らしからぬテンポの良さ」が完全に削がれていて、話も前作と比較して地味なため、これを映画館で観るのは辛かっただろうなと思う。せっかく警視庁が占拠されるという見た目の派手さがあったのだから、籠城事件と警察内部の陰謀が同時並行して進行していくというシナリオにしたほうが良かったような。


ただ、第三幕に入ると小野田官房長たちの「怪しい大人顔」の面々がイキイキとしだすので、面白さが持ち直していた。第一幕で使われたカメラがデータ受け渡しの小道具になっていたり、モールス信号が事件の真相になっていたりと上手い演出の仕方があった。ただ、モールス信号は第一幕からバレバレだっただけに、もう少し工夫の余地もあったかなと思う。


石倉三郎が演じていた生活安全部長は、小野田官房長を刺し殺すだけの役回りで、とってつけた感じが顕著だった。話に絡まないのに、そこそこ名前のある俳優を配置すると展開がバレバレになるよねという。しかも、石倉三郎ってこんな役に適任なだけに。この辺りも、小野田官房長というキャラクターを退場させるための展開としては、あまり上手いとは言えなかった。もっと、警察内部のしがらみ的なものと一緒に退場するようにしないと、犬死で終わらせる役柄ではないだけに残念だった。


総じて、テレビドラマの二時間枠で観るには十分すぎるクオリティだと思うものの、この内容で映画にするのは、もう少し超えるべきハードルがあったのではないかと思う。地味な展開でも緊迫した映画にすることは可能だっただろうし、良い顔の面々を揃えているのだから、もっとドロドロの内部抗争劇にすることもできたと思うのだけれど。