『阪急電車 片道十五分の奇跡』

テレビで鑑賞。ちなみにこの直前に観た映画が『ウォーリー』。


阪急電車 片道15分の奇跡 [DVD]

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【ストーリー】
阪急電車を利用する人々のオムニバス。


【見所】
僕の母親が映画館で『阪急電車』を見たときに、同じ観客のおっさんが「あー、つまらん映画や」と叫んだらしくて、そのときは憤慨したものの、こうやって映画を見てみると、叫ぶのも仕方ないかなと思った。映画を観て唖然としたのは久しぶり。見所?
そんなものないよ?


【感想】
胸糞の悪くなる映画を久々に観た!


普通の(この系統の)映画って「10のマイナスがあって、100のプラスがある」か、「100のマイナスがあって、100のプラスがある」かだと思うけれど、この映画は「100のマイナスがあって、10のプラスがある」映画。そして、
「この世界はそんなに悪くないんやで〜」
と言う映画。ふざけんな。なんか、「噴飯」というのがこれほど的確な映画は他にないと思う。あと、映画の作りも、観客をスイッチかなにかと勘違いしているのか、不快な出来事で一度スイッチオフをして、
「はい、ここで泣いて〜(音楽スイッチオーン!)」
で益体もない泣き芝居が入るという。こんなので感動する人って、振り込め詐欺とかに騙されるんじゃないの? で、その後に「この世界はそんなに悪くないんやで〜」と言われたらホンノリするんじゃないの? そんな人と僕は知り合いたい。


阪急電鉄を利用する人々の人生をオムニバス形式に描く、というプロットはそんなに悪いものではないように思えるけれど、ここまで胸糞悪い映画になると原作者や阪急電鉄に申し訳ないのかと、そればっかりが気になった。本当に、この映画は「意思を持った阪急電鉄がムカつく乗客を轢き殺しまくる」物語にしたほうが、何十倍も宣伝効果のある良い映画になったと思う。


とにかく最初から最後まで、強烈すぎる「胸糞悪い出来事」を、よさげな音楽を奏でる薄っぺらな「泣かせたい演出」で回収する展開が、まったく効果的になっていない映画だった。全編この調子で問題が解決していない状況でも、よさげな音楽が流れれば観客が泣くとでも思っている演出手法が本当に舐め腐っている。もしかしたら『ウォーリー』を観たあとだからかもしれないけれど、本当に映画にも格というものがあるんだなぁと思った。


あの強烈すぎるDV男とか、うるさいオバサンとか、この映画に本当に必要だったのだろうか。とにかく強烈すぎて、感動したいところを完全に打ち消していると思う。あのレベルは轢き殺されてしかるべきなウザさだっただけに。しかも両方とも説教でなんとかなるという、解決にもなっていない解決でなにを伝えたいのかと思った。とにかく感動的な音楽を流せば条件反射で感動するやん、という映画の作りが一番噴飯ものだった。


もっとドラマを描こうよ!軍オタの若者とゴンダワラのエピソードでいきなり演出が変わって飛行機が飛んだり、絵が出たりとバカじゃねーの?あと、いちいちセリフ喋りすぎ。女子高生が社会人と恋愛するような話を映画にするのは(現実的には犯罪一歩手前なだけに)どうかと思った。乗客のマナーを車掌が注意しないでおばあちゃんが注意する電鉄会社に、僕は乗りたいと思わないんですけれど。なんだか、ここまで文句しか出ない作品も久しぶりだ。


本当に、映画を見ていて「バカじゃねーの」としか思わない映画も久しぶりだった。阪急電鉄も、こんなマイナス宣伝にしかならない映画に協力するなよ、と思った。