『未知との遭遇』

スカパーで鑑賞。



【ストーリー】
謎のUFOを追って、男が家族を捨ててアメリカ軍の秘密施設に向かう。
第一幕:オープニング〜ロイと警察のUFO追跡まで
第二幕:UFO見物〜デビルズタワーでの睡眠薬散布まで
第三幕:宇宙人とのコンタクト〜ラストまで
第二幕のロイの頭がおかしくなる描写は必要だったかな、と思う。


【見所】
これはやっぱりスティーブン・スピルバーグの演出力の妙技を堪能する映画だと思う。とにかく、「なにか不穏なことが起きている」描写がすごい。踊るおもちゃ、砂漠の船、唄うインドの人々……の演出が本当に上手い。スピルバーグって第三世界の人々を本当に上手く撮る。あと、フランソワ・トリュフォーの姿とか。


【感想】
有名な作品だけれど、最初から最後まで観るのは今回がはじめて。宇宙人との出会いをテーマにした作品なんだけれど、取り留めのない物語展開を宇宙人の専門家たちのスケールのでかい不思議なシーンと、主人公のロイとロニーの身に起こるパーソナルな不思議なシーンの連続で観客の興味を引っ張っていく。特に専門家たちのシーンは本当に「なにかが起きてる?」感が素晴らしい。


この物語の一番の弱点はロイにどうにも感情移入しづらいところにある。特に中盤の家の中に巨大なデビルズタワーの模型を作るところとか、延々と頭のおかしい人描写が続いて、子供たちが泣き叫び妻は出て行くので、なんだかいたたまれない気持ちになってくる。家庭がそれなりに魅力的なだけに。


もちろん、この展開は最後に宇宙船に乗るための説得力へと繋がるのだけれど、それなら最後に家族との名誉回復的な話があってもよかったかなと思う。ただ、すべてを捨てた人間だけが、栄光を手に入れる的な帰結は宗教的な正さがある。アメリカの観客的にはこちらのほうがしっくりくるのかもしれない。


宇宙人の造形とかは、今の基準でいえば仕方ないの一言。スピルバーグの不思議演出は今の基準でも第一級のものだ。スピルバーグは子供の使い方が面白い。最初のあたりで、赤ちゃんの人形を叩き壊すハイテンションな子供の描写とか、ドアを開けたときの変な寝相とか、頭がおかしくなった父親に涙を浮かべる子供とか、とにかく冴えまくっている。


荒唐無稽な話に観客の興味を持続させるための、これでもかというディティールの積み重ねも上手い。アメリカの時代の空気を切り取っていることにも成功しているし、スピルバーグの天才性を堪能するためにも鑑賞ある価値があると思う。