『GANTZ』

テレビで鑑賞。


GANTZ [Blu-ray]

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【ストーリー】
死んだ人間が宇宙人と戦う。
第一幕:オープニング〜ネギ星人撃破
第二幕:ネギ星人撃破〜田中星人撃破
第三幕:田中星人撃破〜ラスト
この物語は基本的に登場人物の設定が間違っているので、カタルシスのないものになっている。


【見所】
倫理的にどうかと思える展開、チームワークのない戦い、無駄に長いシーン、そしている意味のない登場人物たち。


【感想】
どうしてこうなった……


GANTZを映画化するとしたら、誰がどう考えてもネギ星人、田中星人、おこりんぼう星人の三編を「発端」「成長」「破滅」で上手くまとめれば、それなりのものができるはずなのに、まったくできていない映画だと思った。漫画を原作とする映画としてのハードルは、GANTZの場合相当低いはずなのに、漫画をそのまま映画に押し込んでいるので、映画的な面白さがほとんど削がれたものになっている。


この映画の最大の変更点は、主人公の玄野と加藤が高校生から大学生になっていることで、これはおそらく二宮和也マツケンの年齢からしたら仕方ないのかもしれないが、これによって登場人物の造形がおかしなことになっている。


一番の問題点は主人公の玄野。このキャラは過去の栄光を失ってしまった人間で、それが宇宙人と戦うことで栄光を取り戻そうとするのだけれど、丁寧に描かれていないのでただのエキセントリックなキャラクターになってしまっている。もしかしたら、鏡を見て面接の言葉を呟くシーンなどで『タクシードライバー』のトラヴィスっぽさを出そうとしているのかもしれないけれど、二宮和也ってそんな風には見えないし。スーツを着ての特訓描写とかをもっと詳しく描いたほうが面白いのに大ジャンプするだけだし。


観ていて思ったのは、宇宙人を撃退すればいいだけの話に何をグダグダしているのだろう、ということ。戦い方に戸惑う描写はネギ星人までにしてほしかった(実際、原作もそうだったし)。ネギ星人の子供を追いかけるシーンなんか必要とも思えないし、ここの戦い自体、五分で終わらせることもできたと思う。それで序盤に玄野の人物像をしっかり描写しておけば、もっと感情移入しやすいキャラになっていたはず。


本当は、見せ場に次ぐ見せ場の連続にしないとGANTZっぽさがなくなってしまうはずなのに、とことん湿っぽい話を続けるし、それがなにか解決することにも繋がらない。連載漫画の表現手法を映画に安直に当てはめるだけではダメで、もっと上手い語り方があるように思えた。とにかく、一撃必殺の武器を構えただけでなかなか撃たないのでイライラするし、仲間が殴られているのに一斉に戦わないで傍観している描写もイライラする。


あと、直接的な人体破壊描写は避けるのに、ババアと子供が死ぬ展開をしっかり描くのは倫理的な線引きとしてもどうかと思う。ババアと子供なんて必要のないキャラだし。それよりも暴走族とかイケメンとかアンジーとかゴルゴを出したほうが良かったんじゃないのかなぁ。とにかくアクションにスピード感がないし、対宇宙人戦は先に進むほど杜撰さが露わになっている。


オープニングからネギ星人の子供が出てくるまでの展開は良かったと思う。思ったよりも映画としての見栄えも良くて、以外に拾い物かと期待したが、そこからひたすらネギ星人との鬼ごっこがはじまって噴飯ものだった。前後編なので後編に続く伏線もあるようだけれど、一応映画化できそうな前半がこの体たらくで、あの後半をどう映画化する気なんだろうか?


※色々書いたけれども、実はそれほどヒドい映画とも思っていないです。これよりヒドい邦画は山のようにあるので。個人的にはビジュアルはそれなりに頑張っているところは高評価です。あと、説明過多な邦画が多い昨今、説明をしなさすぎ(でも、これだけ長い)映画も珍しいかなと。