『スーパー!』

DVDで鑑賞。


スーパー! スペシャル・エディション [Blu-ray]

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【ストーリー】
妻を奪われた男が犯罪と戦う。
第一幕:オープニング〜神の指に触れるまで
第二幕:クリムゾンボルトの活躍〜ボルティーとのセックスまで
第三幕:ジョックとの対決〜ラストまで
ストーリーはほぼ完璧。でも、ラストだけは評価が分かれるかも。


【見所】
オープニングの「下手な京アニダンス」から、テンポ良く話が進んでいく。主人公のいたたまれなさと、クリムゾンボルトたちのゴアな殺し合いと正義の制裁描写、そしてくだらない話の皮を被っていても、ちゃんと考えさせられる内容になっている。あと、ボルティーがエロくてエロい。


【感想】
あらすじから『キック・アス』を連想したけれども、スーパーヒーローを正面から描いた作品ではない。もっとリアルさを前面に押し出して、人生や倫理を問い直す物語になっている。


冴えない中年男性が妻を悪党に奪われたことで一線を踏み越えてしまい、スーパーヒーローのコスチュームを着て、街の悪をレンチで(文字通り)叩き潰していく……というコメディを、とことんまで突き詰めてゴアな描写をそのまま描くとこうなる、と思った。でも、この主人公は善良な一市民なんだけれど、最初から狂っている人間として描かれているのもポイントだなぁと思った。キリストが「くよくよするな」と言う場面とか笑ってしまった。


で、神の指に脳が触れることで啓示を受けるのだけれど、その前の触手で頭が割開かれてしまう描写から、物語のゴアな描写が隠さずにどんどん出てくる。レンチで頭を殴ったら血が噴き出ます、という当たり前のことがちゃんと描かれている。教育的。


この映画ってリビー役のエレン・ペイジが本当に魅力的だった。クリムゾンボルトの相棒として、無邪気な凶暴性を発揮するキャラとしては『キック・アス』のヒットガールが思い浮かぶ。あっちは子供という当然なところがある一方、リビーは完全にキチガイとして描かれていて素晴らしい。それにちゃんとエロいし、バカだし、ノリノリだし観ていて楽しかった。だから、あの結末は泣けるんだよなぁ。


個人的には、やっぱりラストは主人公は逮捕されるべきだったと思う。あれだけのことをしたのに、何となく話が流れているのは如何なものか。でも、あの終わり方は本当に感動してしまった。救いの物語としてはほとんど完璧なのでは? 役者陣はみんな魅力的に描かれている。ケビン・ベーコンは難しい役柄をきちんと演じていて、本当に名優という感じがした。


チープな絵面と、ご都合主義も見え隠れする映画で、ゴアで引く描写もふんだんに盛り込まれているけれども、物凄く良い映画だった。特に94分という短い時間に、凝縮された面白みがテンポ良く展開されていくのは、下の映画と比較するまでもない「映画の格」を感じた。笑える部分がたくさんあるのもポイントが高い。ポスト・ダークナイト時代の、新しいヒーローの方向性を提示したという点でも見逃せない作品。