『バトルシップ』

映画館で鑑賞。ユニバーサル100周年記念映画……なんだけれど、同名の海戦ボードゲームを元ネタにしている。


バトルシップ (リンダブックス)

バトルシップ (リンダブックス)


【ストーリー】
宇宙人が襲来したので、アメリカと日本の軍艦がこれを倒す。
第一幕:オープニング〜エイリアン落下まで
第二幕:エイリアン落下〜エイリアンの戦艦三隻撃破まで
第三幕:戦艦ミズーリ復活〜ラストまで
この映画の弱点は第二幕にある。ここで主人公の成長が上手く描かれていないのは欠点だと思う。


【見所】
やはり、戦艦ミズーリ復活のシーンには不覚にも目頭が熱くなってしまった。画面の端にポツポツっと立っている老人達の姿、そして握手。ここで奮い立たない男は「漢」じゃない! 的な映画的勢いがある。そこから繋がる戦艦ミズーリの大砲撃戦も。浅野忠信も主人公とのバディ感ある役柄を上手く演じていたし、なによりも日本大フィーチャー、チキンブリトー大フィーチャーなところが良い。ブイを使ってエイリアンの戦艦を攻撃するところは、元ネタを上手く翻案したなぁと舌を巻いた。


【感想】
リーアム・ニーソンが『96時間』のキャラクターっぽくて、いつ娘との結婚を願い出た主人公の首を折るのか、それがドキドキした。


トランスフォーマーを作ったハズブロ社製作ということで、なんとも豪華に金を投入したSF超大作になっている。海戦ボードゲームを元ネタに200億ドルの映画を作ろう! と決めたプロデューサーや経営陣の大博打は狂気の沙汰だと思うけれども、意外や意外、かなり面白い作品に仕上がっていた。最初の音波兵器でダメージを受けない主人公たちとか、戦艦ミズーリがいきなり稼働できるわけがないとか、おかしいところを挙げるときりがないけれども、マイケル・ベイ魂を注入されたハズブロ社にとっては、どうでもいいことなのかもしれない。ザ・力業、それで面白ければいいじゃない、という感じ。


とにかく派手な映像と男の艦砲射撃描写に、これ以外のものが映画に必要なのかと思う。終盤は『SPACE BATTLESHIP ヤマト』もビックリな人的スケールの少なさでも、ハワイ周辺がバリアーで閉ざされているからという限定感のある描写があるのでOKなのか。それよりも、チキンブリトーほしさにコンビニ強盗をする主人公が、よくもまあ地球を救う男になれたものだなと、脚本の妙技に酔いしれてしまう。


物語的には主人公の成長があんまり描かれていないのが気になった。この映画、中盤のイージス艦みょうこうの乗組員を救出するまで、主人公はダメダメな奴なんだよね。そこから奮起してヒーローになる……のですが、ダメダメからヒーローへの昇格が上手くいっているようには見えなかった。これはたぶん、浅野忠信イージス艦の指揮権を一時譲渡したからで、試行錯誤しながら正しい道を進む描写があればもっと主人公に感情移入できたかなと思う。一方、脇を固める俳優陣はみんな魅力的だった。あのアンテナの技術者のキャラクターとか最高。


物語はタイムリミットという「破滅」をどう解除するかに突き進み、戦艦ミズーリが復活したところで最高潮を迎える。アメリカ軍の兵器が普通に効くエイリアン、というのは珍しいが、でも実際のところ効かない道理はないとも思うので、これはこれで素晴らしかった。エイリアンの極悪非道の兵器も素晴らしい。続編を作る気満々の終わりかたをしたので、アメリカのほうでも好成績を収めて、ぜひとも続編を作ってほしいと思う。そのときは、「エイリアンに攫われた娘を取り返すために、相手の宇宙戦艦に乗り込むリーアム・ニーソン」というプロットを付け加えてほしい。